【ボクシング】長谷川穂積インタビュー「俺は、俺に勝ちたい」 (2ページ目)
――反対に、年齢を重ねたからこそ手にしたものはありますか?
長谷川 昔と比べて、「ボクシングをより知った」ということですね。ボクシングの奥深さが分かった。最初は何も知らずにこの世界に入ってきて、勝つことの難しさも、負けることの悔しさも、俺の場合はほとんど知らずにきました。今、それを知り、気持ちひとつでボクシングが良くも悪くもなることを学んだ。「チャンピオンになったら自信がついて強くなる」「チャンピオンが負けたら自信を失って弱くなる」って、よく言われるんです。その意味が、今はよく分かる。本当に気持ちひとつで、強くも弱くもなるから。まあ、歳を取ったんだなって、いろんな面で実感しますよ。最近は、涙もろかったりしますし。
――最近はどんなことで涙しましたか?
長谷川 ソチ五輪の浅田(真央)選手の演技ですね。選手はもちろん、誰もが金メダルを目指しますよね。でも、ソチ五輪を観て思ったんですけど、勝っても負けても、それこそメダルの色も、ある意味関係ないんじゃないかなって。どれだけの人に勇気や感動を与えられるのかが大事というか。そこに、メダルの色は関係ない。その人が、それまでに積み重ねて来たものが大事だと思う。そして、人に勇気や感動を与えられるってことが、アスリートとして一番幸せなことなんじゃないかなって。
――なるほど。では、より深くボクシングを知った今、もっと好きになりましたか? それとも嫌いになりましたか?
長谷川 好きにもなりますし、嫌いにもなります。どっちもです。
――先ほど、引退すら視野に入れていたと言っていました。引退後のことも、すでに考え始めているのでしょうか?
長谷川 ボンヤリですけどね。グローブを置くのも、そう遠くはないですから。
――例えば、どんなビジョンがあるのでしょう?
長谷川 今は言えないです。でも、ボクサーとしてのビジョンも、人生としてのビジョンも、胸に抱いていることは多少あります。
――では質問を変えて、キコ・マルチネスに勝った場合、何度防衛したいですか?
長谷川 それも、今は言えないです。
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