【ボクシング】間違いなくホンモノ。井上尚弥は辰吉を超える!? (2ページ目)
20歳の「モンスター」が、いかに規格外であるか。対戦した佐野のコメントは説得力に満ちている。「とにかく『強い』としか言いようがないです。駆け引きや間の取り方がうまく、引き出しの数も多いので対応できない......」とお手上げといった様子。そして、「まだ伸びしろがあるので、来年か再来年には、もっとバケモノになっているはず」と加えたほどだ。
かくいう私も、曲がりなりにもプロの書き手として30年以上ボクシングとかかわってきたが、プロ3戦の時点でここまで完成されたボクサーは稀有(けう)であると断言できる。アマ世界選手権優勝後にプロに転じたユーリ・アルバチャコフ(ロシア/当時協栄ジム)を除けば、辰吉丈一郎と伍する逸材といえよう。スケール感やカリスマ性では辰吉に一歩譲るものの、ボクシングの完成度、攻防のバランスでは井上が凌駕しているといってもいい。
「150年にひとりの天才」というキャッチで知られた元世界ミニマム級王者の大橋秀行氏も、愛弟子の資質を絶賛する。「井上と比べたら、私なんか『150人にひとり』ですよ。井上の爆発力は辰吉に匹敵、いや一発の威力は上を行っているんじゃないかな。チャンス時の詰めや、ディフェンスも素晴らしい。足らないのは経験だけでしょう」と話す。師の評価だけに、割り引いて考えなければならないところだが、実際に拳を交えた選手も大橋会長と同様の感想を抱いている。
井上とスパーリングで約50ラウンド、手合わせした前日本ライトフライ級王者の黒田雅之(川崎新田ジム)は、「とにかくすごい選手です」と話す。「スピードとパンチ力は半端ではないですね。井上選手は相手の動きをよく見ているので、こちらが相手を崩そうとして攻めていっても、合間にカウンターを打ち込まれ、逆に崩されてしまうんです。しかも手合わせするたびに、何かしら新たな驚きがある」。そこには佐野のコメントと共通するものがある。
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