【ボクシング】西岡利晃「日本人も本場アメリカを目指さなければウソになる」
日本ボクシング界の現状、そして未来について、西岡利晃は思いの丈を打ち明けた【西岡利晃のすべて・後編】
引退会見から2ヵ月。WBC世界スーパーバンタム級名誉王者・西岡利晃は言った。「もう一度、ラスベガスのリングへ」――。西岡には、新たに抱いた夢がある。そして現在は解説者として、日本のボクシング界はどう見えるのか? ボクシングに込める思いをすべて聞いた。
(前編はこちら>)
――引退会見から2ヵ月が経過しました。現在はどんな生活をされていますか?
西岡 ジムを開くために、神戸、大阪周辺で物件を探している最中ですね。
――「こんなジムにしたい」というビジョンはありますか?
西岡 世界チャンピオンを育てたいという思いはあります。そしてもう一度、ラスベガスに行きたいという夢もあります。今度はセコンドとして。もちろん、一歩一歩です。具体的な話を進めるのもこれからですし。ただ、世界チャンピオンを育てることがすべてとは思っていないです。いろんなレベルの選手がいて、そのステージで頑張ることが大切。たとえば、「あんな(レベルの高くない)選手だったアイツが、こんな試合に勝てるんだ」ってなったら感動するじゃないですか。だから、世界チャンピオンじゃなければ価値がないなんて、まったく思わないです。
――ジムを開いたら「これだけは選手に伝えたい」ということは?
西岡 もちろん、これまで僕が培(つちか)った技術を伝えたいです。でも、一番は「心の部分」だと思います。あの日、あの練習を乗り越えられたから、そして自分に打ち勝ったから、今の苦難もたいしたことない――ボクサーにとってそんな「生きる糧(かて)」になるようなジムにしたいんです。ボクシングをやって良かったって。今、僕が思い出すのは、試合はもちろんですが、試合に向けて行なったトレーニングの日々です。それが大きな糧になっていますから。
――ラスベガスの話が出ましたが、日本人選手の海外進出についてはどう思いますか?
西岡 ラスベガス......、アメリカがボクシングの本場です。だから、日本人ボクサーも世界に出て行ってほしいと思いますね。野球でいえば、多くの選手が損得勘定じゃなく海を渡っている。サッカーもそうでしょ? 金銭は後からついてくるもの。だから、ボクサーなら本来、「ラスベガスでやりたい」と思うはずなんです。もちろん日本人選手は、経済面で守られている部分があると思います。フィリピンの選手などが海外に出て行くのは、経済的状況がそうさせている面もあると思うんで。でも、そういうものを抜きにしても、本場でやりたいって気持ちは、男として、ボクサーとして、なければウソだと思います。
1 / 3