【ボクシング】西岡利晃「ドネア戦後、選択肢は『引退』しかなかった」
ノニト・ドネアとの死闘から3ヵ月。西岡利晃が「ラストマッチ」を振り返った【西岡利晃のすべて・前編】
2012年、大晦日――。WBC世界スーパーバンタム級名誉王者(※1)西岡利晃の姿は、リング上ではなく、『究極の3大世界戦(※2)』と銘(めい)打たれた世界タイトルマッチの解説席にあった。
(※1)名誉王者=WBCが授与する最高の栄誉とされ、移譲することのできない終身タイトル。
(※2)究極の3大世界戦=WBA世界スーパーフェザー級王座統一戦(内山高志vsブライアン・バスケス)、WBC世界スーパーフライ級タイトルマッチ(佐藤洋太vs赤穂亮)、WBA世界スーパーフライ級タイトルマッチ(テーパリット・ゴーキャットジムvs河野公平)の3試合。
西岡はリングに立つボクサーの姿を見つめ、「カッコいいな」と思いながら、同時に2度とそこに立つことはないと改めて悟る。「やりきった」――そう胸を張る、昨年10月13日、カリフォルニアのホーム・デポ・センターで行なわれたノニト・ドネア(フィリピン)との試合から3ヵ月。西岡利晃が過去、現在、そして未来について語った。
――まずは現役最後の試合となった、昨年10月のドネア戦についてお聞きしたいと思います。試合に臨むにあたって「減量が大変だった」との情報も流れましたが、体調はいかがでしたか?
西岡 体重が落ちにくかったのは事実ですが、予定よりも少し落ちにくかった程度で、試合数日前にはリミット(55.3キロ)に入っていましたね。やるべきことをすべてやり尽くして、リングに立てました。「ついに」という気持ちでワクワクしていました。
――では、試合前に立てた戦略は?
西岡 試合前から「ポイントで勝とう」という考えはなかったです。(パンチを)当てたもん勝ち。そういう意識でした。当たったほうが勝つだろうと。ドネアは特に序盤の動きがいいんで、前半は抑えて、中盤から後半にかけて行こうとも想定していましたね。
――対峙したドネアの印象はどうでしたか?
西岡 想定していた通りでした。
――それは、具体的には?
西岡 ドネアは、僕が出てくるのを見計らって、得意の左フックを狙っていた。オーソドックスに構えて、左足に重心を乗せていたんで、狙っているのが分かりましたね。
1 / 3