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【ボクシング】ミドル級・村田諒太。ケンカ小僧の理想的な成長 (2ページ目)

  • 原 功●文 text by Hara Isao
  • photo by JMPA

 出場を逃した北京五輪から4年――。村田の環境は大きく変化した。指導を受ける立場から教える立場に変わり、結婚と長男の誕生もあった。恩師・武元氏の死にも遭遇した。こうした悲喜こもごもが村田をひとりの人間としてスケールアップさせたといったら、強引なこじつけになるだろうか。

 今大会、昨年の世界選手権で準優勝している村田は、優勝候補の一角に挙げられていた。しかし実のところ、欧米や旧ソ連諸国の並み居る強豪相手に決勝まで勝ち続けることは、至難とみられていた。

 そんななか、村田が紙一重の勝負をものにして優勝することができたのは、諸外国の強豪相手に、体力や馬力でひけを取らなかったからだけではないだろう。苦境でもあきらめずに食い下がる精神力の強さも、尋常ならざるものが感じられた。

「注目されていることも、期待されていることも知っています。でも、それがプレッシャーになることはありません。それで負けたのなら、自分に力がなかったということです」

 日本を発つ前、村田はそうキッパリ言い切った。そのうえで堂々と「金メダルを狙います」と宣言。社会人として、家庭人としての責任とともに、自分に対する揺るぎない自信が4年の間に培(つちか)われていたのだろう。

 パワーとスピード、テクニックなど総合的に高いレベルを要求される『花形階級』での優勝だけに、村田への注目度は急上昇するはずだ。アメリカをはじめとしたプロのマネジャー、プロモーターが接近してくる可能性も十分にある。

「五輪後のことは金メダルを獲ってから考えます。頂点に立ったときにどんな景色が映っているのか、僕自身がどんな考えを持つかわからないので」

 大会前、村田はそう話していた。一方、見る側のボクシングマニアでもある村田は、こうも言っていた。

「セルヒオ・マルチネス(プロのミドル級最強のアルゼンチン選手)が強いっていうけれど、アマの金メダリストとどっちが強いんだろう......という単純な興味があるんですよね」

 身も心もゆっくりと休んだ後、頂点に立った村田がどんな景色を眺めているのか、気になるところだ。

『Sportiva ロンドン五輪・速報&総集編』(2012年8月17日発売)より転載

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