【男子バレー】西田有志、サーブで「人を狙います」 ロス五輪へ向けて発揮される「適応力」 (3ページ目)
「あえて西田選手に上げました」
髙橋は、そう言ってタネを明かした。
「西田選手が助走を取れていなかったので、相手選手は『西田選手が打つのは難しいと判断する』と僕は思ったんです。相手は『自分のスパイクが、ツーアタックで飛んでくる』と考えているだろうなと。それが、ブロックが自分に飛んでこなかったのは意外で(苦笑)、予想が外れたというか、賭けに負けたというか。ただ、ポイントにつながればOKなので、西田選手が無理な体勢でも打ってくれたのがよかったです」
西田は自分のプレーを状況に適応させた。その瞬発力は、彼の野生を感じさせる。本能ではない。肉食動物が何度も狩りを重ねて編み出した技術のようなものだ。
その点、西田のサーブも考察の賜物と言える。論理的にアプローチし、経験のなかでアジャストさせ、作り上げてきた。
「自分の場合は、ボールを芯で捉えるようにしています」
西田はインタビューのなかで、技術構造を説明していた。
「芯を捉えるとボールは回転せず、無回転になって狙ったコースに入ってから一気に変化するんです。(急角度に曲がる)回転か、無回転か、を考えた時、自分は回転がかかっていないほうが不規則になるし、(球が)重いなって。サッカーも無回転シュートがキーパーの手を弾いて入っちゃうというシーンを見ますし、その理屈を考えたら......」
アジア選手権の西田は、ミリ単位でサーブの「入る、入らない」を繰り返している。難易度の高いコースをついているのだが、レシーバーの心を折るような一発も放てる。
「これまでは肩口のところを狙っている感じでしたね。新しいルールになって、ポジションチェンジが多くなったので、ゾーンのどこを狙うのか、それを考えて......でも明日(イラン戦)は、僕は人を狙いますよ! 今まではまらなかったんですが......。ブレ球? そうですね。その状況になったらいいですね。しっかりと戦っている空間を意識しながら戦いたいです。そこまで深くは考えずに」
西田はそう宣言したが、その"我流"に型はない。人を狙うことで得点につながりそうだったら躊躇うことなくそうするし、もし相手が対策をしてきたら、もっと有効な手段を使うだけだ。
ロス五輪出場がかかるイラン戦も、西田は"狩り場"に適応する。
著者プロフィール

小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。
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