髙橋藍の激動のシーズンをその言葉とともに振り返る SVリーグ初代王者は「通過点でしかない」 (2ページ目)
【マイナスをプラスに変える経験を重ねてきた】
今回のアジアチャンピオンズリーグでは、準決勝はフルセットの末、カタールのアル・ラーヤンに敗れ、髙橋は悔しさに打ち震えていた。コートでは涙を止められなかった。それでもマイクの前に立つと、会場の観客に感謝を伝えていた。そして会見に出席した時には、すでにいつもの彼だった。
翌日の3位決定戦は、面目躍如だったと言える。人によっては消化試合でしかないだろう。しかし彼は、「成長するため。1試合も無駄ではない」と挑み、勝利に導いた。
「目標にしていた世界クラブには(手が)届かなかったですが、3位決定戦で勝って、笑って銅メダルで終わることができました」
そう語る彼にとって、勝負に"序列"はないのだろう。
インタビューで、聞いたことがあった。
――中1の頃は身長が158センチでリベロをやっていたそうで、身長が伸びない不安を将来の自分へ手紙に書いていたそうですね?
一拍置いて、彼は答えた。
「僕、負けず嫌いなんですよ。ちっちゃい頃から、できないものを人前で見せない、親の前でも見せない。できるようになってから見せていました。やれない自分を見せるのがすごく嫌で。何にしても負けず嫌い。負けたらすごく悔しがるし、お兄ちゃんが先にいろいろ経験するなか、"僕もできるし"って内心で思っていました。でも身長が伸びず、お兄ちゃんは結果を出してすごいけど、それ以上になれるのか。負けたくない......っていう気持ちで書いたんだと思います」
その自負心が彼を進化させたのか。髙橋はマイナスをプラスに変える経験を重ねてきた。そのプロセスで、勝負への機微も身につけたのかもしれない。彼我(ひが)の戦力を見極め、どうやったら勝てるのか。その隙を見極められるようになったのだ。
すべての経験が今の彼のなかで生きている。たとえば当時、リベロをやっていなかったら、"オールラウンダー、髙橋藍"は誕生しなかっただろう。その点では、運命に導かれているところもある。
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