西田有志が振り返る男子バレー日本代表の進化。パリ五輪予選に向けて「どのメンバーが出ても結果が出せる」 (3ページ目)

  • 中西美雁●取材・文 text by Nakanishi Mikari
  • photo by FIVB

【パリ五輪予選に向けて「勝ちに貪欲に」】

 西田自身も大きなインパクトを残し、特にフランス戦では前衛からも後衛からもスパイクを決めまくり、スパイク決定率70%、両チーム最多の31得点を挙げた。試合後、ブラン監督は「西田は世界トップレベルのオポジットだと胸を張って言える」とコメントしている。

 西田は試合後のミックスゾーンで、「着替えてくるので少しお待ちください」といったんその場を離れ、ジャージ姿で戻ってきた。その表情には高揚感が滲み出ており、「自分でも、途中から『めっちゃ(スパイクが)決まってないか?』と思いながら打ってました」とコメント。「日本のVリーグもよろしくお願いします!」と手を振って去っていった。

 ただ、時間を経るごとに悔しさが大きくなっていったようだ。

「試合内容としてはすごくよくても、結果は負けですからね。点数としては1、2点の差ではありましたが、そこを取り切れるかどうかで最終的な順位が変わってくる。

 昨年度は勝ち星も多かったし、今まで感じたことがないチームのまとまりや躍動感もあったけど、今年もそれが続くかはわかりません。また全員がレベルアップして、常にあのフランス戦のようなバレーができて、さらに勝つことができるレベルまでいきたいですね」

 29年ぶりに予選ラウンド突破を果たした2021年夏の東京五輪から、チームとして向上した点については次のように語った。

「パスの質がすごく上がって、チーム全体として同じテンポで攻撃に入れるようになりました。形や数字で見えにくいところですが、攻撃のバリエーションが増えたと思います。セッターの関田(誠大)さんが、相手ブロックに的を絞らせないようにセットアップをしてくれたり、アタッカー陣の工夫もあったので、チームとしての戦力が上がったように感じます」

 2023年度は、パリ五輪予選のひとつである「FIVB パリ五輪予選/ワールドカップバレー2023」が日本で行なわれる(女子は9月16日、男子は9月30日に開幕)。同大会では、開催国のフランスを除く世界ランキング上位24カ国が8カ国ずつ3組に分かれて戦い、各組の上位2カ国が出場権を獲得することになる。ホームの後押しを受けながら、そこで切符を手にしたいところだ。

「そこが一番の大きな大会で、代表チームとしても大切な分岐点になる。そこまでに勝つチームを作っていくために、どれだけ選手個人が勝ちに貪欲になり、先ほども言ったように(それぞれのリーグで)個々のレベルをどう上げていけるか。当たり前のことを高いレベルでやることが、オリンピック予選の結果に繫がってくると思います」

 各代表選手が奮闘するVリーグは終盤を迎えているが、西田にとっての2022-23シーズンは、バレーボールファンの感情が大きく揺さぶられるシーズンとなった。
 
(連載6:2年ぶりのVリーグを語る。妻の古賀紗理那とは「バレーの話ができるのはすごくいい」>>)

【プロフィール】
◆西田有志(にしだ・ゆうじ)
2000年1月30日生まれ、三重県出身。身長186cm。ポジションはオポジット。V.LEAGUE DIVISION1 MENのジェイテクトSTINGSに所属し、2018-2019シーズンに最優秀新人賞、2019-2020シーズンに最高殊勲選手賞、得点王、サーブ賞を受賞。昨年は海外に挑戦し、イタリア・セリエAのヴィーボ・バレンティアでプレー。今シーズンは2年ぶりに古巣に復帰した。日本代表には2018年4月に初招集。以降、左のエースとして東京五輪など国際大会で活躍を続けている。

■西田有志 YouTube公式チャンネル
『YUJI NISHIDA CHANNEL』
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