男子バレー日本代表で注目の「石川祐希の対角」争い。世界選手権は切磋琢磨する「たつらん」が躍進のカギを握る (3ページ目)

  • 中西美雁●取材・文 text by Nakanishi Mikari
  • 縞茉未●撮影 photo by Shima Mami

仲良しで、ライバル

 同じポジションを争う立場だが、ふたりはとても仲がよく、ファンから「たつらん」と呼ばれることも。7月30日に行なわれた世界選手権壮行会紅白戦では、台風が近づいて蒸し暑くなった沖縄アリーナで熱中症になった大塚に、すぐさま髙橋藍が駆け寄って水を飲ませるシーンもあった。

 ふたりは、お互いのことについて次のように語る。

「同じポジションなのでライバルでもあるんですけど、お互いいい刺激を与えあって切磋琢磨して高めあっていきたいです。達宣さんが頑張っているのを見ると、自分も負けちゃいられないと思うし、自分が不調になった時も『達宣さんが控えていてくれる』と思うと安心して任せられる。それで心に余裕もできますし、いいことばかりですね(笑)。世界選手権でも、もっと競い合ってチームにいい成果をもたらしたいです」(髙橋)

「負けられないライバルではありますが、その前にかけがえのない仲間として大切に思っています。ブラン監督のバレーは誰が入っても同じことをできるようにするバレー。僕は主に攻撃面が期待されていて、髙橋選手は守備力。お互いにないものを補い合ってより高いレベルでプレーできるようにしたい。パンサーズでの経験、VNLも経験して自信がついてきました。世界選手権では少しでも自分の役割を果たして、より上の順位を目指したいですね」(大塚)

 大塚が言ったとおり、守備力、特にレシーブでは髙橋が上回る。石川の守備の負担を軽減できるため、東京五輪でも全試合でスタメン出場した。ブラン監督は9日の会見で「サーブとサーブレシーブ、Cパス(セッターが大きく動く必要があるレシーブ)からの攻撃力の向上」を目標にしていると話していたが、髙橋も「(セッターの)関田誠大選手がCパスでも積極的にミドルを使ってくれるので、サーブレシーブをする側としては気持ちがラクになった」とコメント。守備での心理的負担の軽減は、攻撃面にプラスとなって表れるだろう。

 東京五輪で控えだった大塚は、今回のVNLで"戦える"ことを証明してみせた。前衛でも後衛でも得点できる能力が高く、「東京五輪の時と比べてすべてのスキルにおいて高くなったと感じている。攻守どちらでも安定性が高くなった」と自信をのぞかせた。ブロックの高さも大塚に利があるため、そこでも印象に残るプレーができるか。

 ロシアで開催される予定だった世界選手権は、ウクライナ侵攻によりロシアの開催権が剥奪され、スロベニアとポーランドの2国共同開催となった。そこで日本が躍進できるかどうかは、このふたりが大きなカギを握っている。

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