大林素子が「サインがほしくて」出した手紙が招いた人生の転機。日立の練習に参加して「久美さんに睨まれました(笑)」 (2ページ目)

  • 中西美雁●取材・文 text by Nakanishi Mikari

監督から電話「一度遊びにいらっしゃい」

――手紙はどういった内容だったんでしょうか。

「『日立が好きで、いつも応援しています。私は中学2年生で身長176cm、SJ(サージャントジャンプ=垂直跳び)は52cm。左利きです。どうしたらバレーが上手になれますか?』という内容でした。そして最後に、『p.s.選手のサインをください。江上さんのファンです』とつけ加えて(笑)」

当時を振り返る大林さん photo by 立松尚積当時を振り返る大林さん photo by 立松尚積――戦略家ですね(笑)。反応はどうでしたか?

「手紙を投函してから3日後、山田監督が家に電話をかけてきたんですよ。完全にパニック状態で話をしたんですが、『家からも近いようだし、一度遊びにいらっしゃい。他のバレー部員が一緒でもいいですよ』と言ってくださって。本当に嬉しくて、現実と受け入れるまで時間がかかりました。それで翌日、中学のバレー部の作道講一郎先生に許可をもらって、全員で日立の練習を見学に行くことになったんです。

 私たちが"ミーハー気分"で体育館のドアを開けたら、山田監督はいったん練習を中止して私たちを迎え入れてくれました。私はキャーキャー言いながら写真を撮っていたんですが、山田監督が近寄ってきて、『せっかくだから練習していきなさい』と言うんです。実業団トップチームである日立の選手たちの練習に、バレー歴1年で技術もない私が入っても何もできないし、『無理です』と断りました。そもそも、江上さんに会いたくて来ちゃった感じでしたからね。

 でも、監督は女性マネージャーと一緒に『いいから、いいから』と私を更衣室に連れていって、『好きなユニフォームを着ていいから、着替えたら出てきなさい』と。そうしたらマネージャーさんも、『江上のファンなんでしょう? 着ていいよ』と言ってくださったんです。それで憧れの、江上さんのユニフォームに緊張しながら袖を通しました。シューズは......たぶんサイズが同じだった(中田)久美さんのものを履いたのかな」

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