屈辱の東京五輪から激変。日本女子バレーの快進撃を支える古賀紗理那の進化と新エース・井上愛里沙の台頭 (2ページ目)

  • 中西美雁●取材・文 text by Nakanishi Mikari
  • photo by FIVB

新エースの台頭と主将・古賀の進化

新エースとして期待される井上新エースとして期待される井上この記事に関連する写真を見る 続く第2戦はドイツとフルセットの接戦になった。2セットを連取された時点で、セッターは松井から関菜々巳(東レ)に。さらに石川に代わって井上愛里沙(久光)がコートに入ると、途中出場ながら13得点と流れを変える役割を果たした。井上はその後の試合でも得点を重ね、27歳にして日本の"攻撃の核"として台頭しつつある。

 井上は2021-22シーズンのVリーグを制した久光のエースとして活躍し、最高殊勲選手賞(MVP)とベスト6を受賞。さらに最多得点部門で、木村沙織が持っていた日本記録を12シーズンぶりに塗り替えたスコアラーだ。バックアタックも決定力があり、東京五輪で日本の弱点だった攻撃枚数の少なさを十分に補うことができる。

 シニア代表への初登録は、眞鍋監督が指揮を執っていたリオ五輪前の2014年。筑波大4年時に出場した2017年のユニバーシアードでエースとして活躍し、チームに銀メダルをもたらした。そのユニバーシアードでは、ロシアの高いブロックを果敢に打ち破っていた。

 課題はサーブレシーブなどの守備面だが、それを補って余りある決定力が魅力。スパイクのコースの幅も広く、ブロックがついても簡単には被ブロックしないクレバーなプレーが光る。VNLでも、第3戦のドミニカ戦で26得点を挙げてチームのベストスコアラーに。第4戦の現世界ランキング1位のアメリカ戦でも19得点と、古賀と共にベストスコアラーとなってストレート勝ちに大きく貢献した。パリ五輪に向け、古賀との"2枚エース"として大いに期待がかかる。

 主将としてチームをけん引する古賀は、東京五輪後、バレーを辞めることも考えていた。しかし眞鍋監督の頼みを受け入れ、かつて竹下佳江さんや木村沙織さんが代表の主将として背負っていた「背番号3」を継ぐことになった。

 VNLでは積極的にチームメイトに声をかけ、試合中にチームを立て直すこともできている。競り勝ったドイツ戦後には、「最初はサーブが消極的だったので、途中で『集中していこう』と話しました。そこから修正ができて、3セット連取で勝ちきれてよかった」とコメントした。

 古賀は東京五輪でも、足首のケガを抱えながら"攻守の要"として活躍したが、今大会ではすべてのプレーがよりブラッシュアップされている。VNLに参加する全16チームの選手の中でベストスコアラーランキング2位につけ、ブロックランキングでは日本勢で唯一の20位以内に入っている(6月15日時点)。

 開催地をアメリカからフィリピンに移した第5戦のポーランド戦でも、マッチポイントを握ってからの最後のポイントは、古賀が1枚ブロックで決めた。前衛でも後衛でも変わらない高い決定力に加え、リベロと共にサーブレシーブを担い、ブロックでも存在感をアップするなど、ますます攻守で欠かせない選手になっている。

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