新鍋理沙「気持ちが折れた」。失意の代表辞退から2年、全日本に戻った理由 (2ページ目)

  • 中西美雁●文 text by Nakanishi Mikari

 しかし、同年の世界選手権でのプレーが「個人的に全然ダメで、気持ちが折れた」という新鍋は、「全日本はそんな状態の選手がいていいチームではない」という理由から、しばらく代表から遠ざかることになる。2015年度の代表を辞退し、翌年のリオ五輪にも出場しなかった。

 再び代表でプレーすることになったのは、久光スプリングスで指揮を執っていた中田久美が、2017年度の代表監督に就任してからだ。それが発表されたのは2016年10月。2016-17シーズン中の試合後の記者会見で、「中田久美さんが代表監督になったので、代表に復帰されるんですか?」と質問された際には、微笑を浮かべながらも何も答えられなかった。

 だが、2017年5月に行なわれた代表の始動記者会見で話を聞いた際には、「久美さんが代表監督になられたから、また代表で頑張ろうという気持ちになりました。久美さんでなければ、現役を引退しようかと思っていました」と涙ぐんだ。

中田久美が監督就任した2017年に代表に復帰した photo by Sakamoto Kiyoshi中田久美が監督就任した2017年に代表に復帰した photo by Sakamoto Kiyoshi 再び日の丸をつけることになった新鍋は「中途半端じゃいけない」と奮起。中田監督がもっとも重要視していた8月のアジア選手権で、チームを10年ぶりの優勝に導く活躍を見せて大会MVPを受賞した。

 だが、翌月のグランドチャンピオンズカップ、さらに2018年の世界選手権でも、チームは表彰台を逃す。その原因について、「チーム全体のバックアタックが少なすぎるのではないか」と指摘するメディアもあった。新鍋はそれほど高身長ではなく、プレースタイルも守備型であるため、バックアタックに入ることは少ない。それに対して「新鍋もバックアタックを打つべき」という声もあったようだが、当時を次のように振り返る。

「私がバックアタックを打ってどれだけ効果があるのかな、と思っていましたね。当時のチームには必要だったのかもしれませんが、打つか、打たないか、どっちが勝つためにプラスなのかはずっと考えていました」

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