錦織圭と伊達公子「元世界4位同士」のささやかな交流 試合後の涙の言葉に「選手の気持ちとして、痛いほどわかる」 (2ページ目)
【目に焼きつけておかなくては】
そんな彼女に、「あれ~、伊達さんじゃないですか?」と、いつものややのんびりした口調で話しかけてきたのは、錦織圭、その人だった。
「試合直前のコート上、審判台のすぐ横ですよ。錦織くんがどれほどの思いでコートに入ってきているか、それはもう計り知れない。ですから私は静かに、なるべく自己主張しないように大人しくしていたのですが、もう向こうから話しかけてきたので! 『そうなんだよね。私になっちゃったんだよね』という感じで、少し言葉を交わしました」
あの時、あの空間を共有していた誰もが、これが錦織圭の現役最後の姿になる予感を抱き、見守った試合前のシーン。その時のネット際では、元世界4位同士のささやかな交流があった。
コイントスを終えた伊達さんが、「彼らしいな。でもこれで、少し緊張がほぐれたらいいな」と思いながら向かった観客席。ただ、席に座り、ウォームアップでボールを打つ錦織の姿を目にすると、「彼のこの魅力的なテニスが、もう見られなくなるんだな」という感傷が、ふつふつと湧いてきたという。
「もちろん全盛期に比べたら、やはりいろいろな面で落ちていたところはあるし、本人ももどかしさはあったと思います。だからこそ引退を決断したわけですし、そうでなければ続けていたはずです。
とは言っても、やっぱり錦織圭のテニスですから。それが見られなくなるんだなという実感が、席に座るとこみ上げてきますよね。
彼のテニスは、ほかの人には真似できない唯一無二のものだと思います。今、日本からも可能性を感じる若手は出てきていますが、『やっぱり錦織圭ではないな』とは思ってしまいます......残念ながら。それだけ彼はスペシャルでしたし、その存在の大きさを、あらためて試合を見ながら感じていました。
だからこそ、目に焼きつけておきたかった。これは、辞める選手は誰しも思うことではありますが、やっぱり今後、どれだけコートに立っても、本当の意味で勝負がかかった試合はできない。錦織くんが緊張感のなか、真剣勝負をすることも、もうない。だからこそ、勝負にこだわる彼の顔と、プレーに挑む心境も含めて、目に焼きつけておかなくてはという思いが私にはありました」
2 / 4

