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錦織圭に引退を伝えたら「うそだーー」 土居美咲は「一番好きな選手。ずっとずっと応援しています」 (3ページ目)

  • 内田 暁●取材・文 text by Akatsuki Uchida

【またコート上で輝く姿を、楽しみに...】

「うそだーーー」

 返ってきたのは、涙の絵文字つきの、真っすぐな感情の吐露。同世代が去ることへの寂しさと、ケガとの戦いへの共感と、そして旅立つ盟友へのエールが綴られていた。

 長くケガと戦いながらもコートへの情熱を失わず、下部大会群にも出場する今の錦織の姿は、土居さんの目にどう映っているのだろうか?

「本当に、純粋にテニスが好きなんだろうなと。それ以外の理由が見つからないです。

 私が言うのも憚(はばか)られるくらい大変なケガをずっとしているし、復帰と離脱を繰り返している。たぶん、私のケガなんてケガに入らないレベルだと思いますが、それを乗り越えたいと毎回思える強さと、本当にテニスがしたいという情熱があるんだと思います。直接聞いたわけではないので、私の想像ですが。

 テニスのツアー生活って、仮にすごく健康だとしても、けっこう続けるのが大変だと思うんです。それは自分の経験だけではなく、周りの選手を見ていても思うことではあります。

 私は、自分がかつていた場所より上に行けるのか、見たことのない景色が見られるまでがんばれるかと想像した時、体の状態を考えると、そこまでのモチベーションが湧かなかった。だから、圭くんが今もモチベーションを保ち続けられているのは、本当にすごいなと思います。

 正直、私には想像もつかないんです。絶対に心が折れる瞬間もあると思うんですが、それを食い止めるだけの情熱があるということですもんね。

 圭くんがどこを目指し、どこまで思い描いているのかはわからないです。ただ、圭くんのATPチャレンジャー(ツアーの下部大会群)での試合映像を見た時、やっぱり、すごく面白いなって思ったんです。

 どの大会でも、相手が誰でも、やっぱり圭くんのテニスを見るのが、私は好きなんですよね。どのレベルの大会で戦っていても、圭くんは特別感があるなって思いました。

 それは別に、圭くんに長く現役を続けてほしいとか、どこまで行ってほしいというわけではないんです。圭くんがやると言ったらみんな楽しんで見るし、『やりきった』となれば、もちろんみんな『おつかれさま』ってなるし。たぶん、それだけだと思うんです」

 土居さんが2年半前に、引退の決断を錦織に伝えたメッセージ──。その最後は、万感を込めたこの一文で結ばれていた。

「またコート上で輝く姿を見るのを、楽しみにしています。ずっとずっと、応援しています」

(つづく)

◆伊藤竜馬の視点(1)>>

【profile】
土居美咲(どい・みさき)
1991年4月29日生まれ、千葉県大網白里市出身。6歳からテニスを始め、2008年12月に17歳8カ月でプロ転向を表明。2015年10月のBGLルクセンブルク・オープンでWTAツアーシングルス初優勝を果たす。2016年のウインブルドンでは初のグランドスラム4回戦進出。オリンピックには2016年リオと2021年東京の2大会に出場。2023年8月に現役引退を発表。WTAランキング最高30位。身長159cm。

著者プロフィール

  • 内田 暁

    内田 暁 (うちだ・あかつき)

    編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。2008年頃からテニスを追いはじめ、年の半分ほどは海外取材。著書に『錦織圭 リターンゲーム』(学研プラス)、『勝てる脳、負ける脳』(集英社)など。

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