錦織圭、全仏1回戦で待ち望んだ対戦が実現 アルカラスとは「遊び心あふれる」似たもの同士 (2ページ目)
【錦織もクレーに変革をもたらした】
アルカラスの台頭は、世代交代のみならず、テニスそのものに変革をもたらしたというのは、衆目の一致するところだ。
約4年前、当時17歳のアルカラスと対戦したダニエル太郎は、「前に入っていくスピードは、今のトップ選手より速い」と、新時代の息吹に触れた衝撃を口にした。
日本のエースに成長した西岡良仁も、早くからアルカラスに熱視線を向けていたひとり。ショットが速いのみならず、ミスを気に留めるふうもなく攻め続ける姿に、異なるテニスセオリーを感得した。
そして錦織も、昨今の若手のショットスピードが、いかに速いかを身をもって痛感してきた。ホルガ・ルーネ(デンマーク/22歳)やシャン・ジュンチェン(中国/20歳)と対戦するたび、その球威への驚きを吐露。さらには「アルカラスやシナーは、もっと速いだろうから......」と、その先にある最高峰の世界を推測した。
かつてクレーコートの戦いといえば、コート後方に下がり、赤い土煙を巻き上げながら駆け、高い軌道のボールをしぶとく打ち続けるのがセオリーだった。そんな20年ほど前と今の光景を比べれば、隔世の感は明瞭だろう。
ただ、その変化の行程を追った時、クレーの変革の起点に、錦織がいることに気づくはずだ。
象徴的なのは、2014年。この年、マイケル・チャンをコーチに迎えた錦織は、新たな師の勧めもあり、ベースラインから下がらず、跳ねるボールを高い打点で叩いて相手の時間と空間を削る、まったく新しい戦術を持ち込んだ。
その柔軟な発想と勇気は、ATP500のバルセロナオープン優勝、そしてATPマスターズ1000のマドリードオープン準優勝として結実する。特にマドリードの決勝では、序盤でナダルを圧倒。猛攻に自身の身体がついていかず途中棄権となったものの、ナダルのコーチをして「錦織のほうが勝者にふさわしかった」と言わしめた。
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