小田凱人が「憧れの存在」を破って全豪OP初優勝「あなたのようなバックハンドが打ちたいと思い練習してきた」 (3ページ目)
【1年前の決勝で敗れた悔しさを晴らす勝利】
その渇望の中心に、おそらくはこの時の飯塚での興奮がある。そしてあの日の飯塚を思い出す時、当時の若きスターの姿も小田は思い浮かべていたのだろう。特に「最年少世界1位」の目標を目指すうえで、ヒューエットの存在は大きかった。
小田がプロ転向する前の15歳の時点で、彼はサポートスタッフたちとともに、未来のタイムラインを描いている。そこには「19歳で世界1位になり、20歳1カ月のヒューエットの記録を更新する」と明記されていた。
飯塚での邂逅(かいこう)から、約5年──。全豪オープン決勝での小田は、成長した自分の姿を見せるように、左腕を振り抜き、ボールを打った。
バックハンドの強打は、世界最高と謳われたヒューエットのそれを上回るほど。左右に打ち分け、押し込み、ネットに出てボレーも決める超攻撃的テニスで、掴み取ったタイトル。それは1年前の全豪オープン決勝で敗れた、悔しさを晴らす勝利でもあった。
あまりの強さと成熟した言動の数々に忘れてしまいそうになるが、彼はまだ17歳でもある。少年の日の瑞々しい興奮と憧れをほとばしらせて手にしたタイトル──それは小田のキャリアにとって、忘れ得ぬ日でもあったはずだ。
著者プロフィール
内田 暁 (うちだ・あかつき)
編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。2008年頃からテニスを追いはじめ、年の半分ほどは海外取材。著書に『錦織圭 リターンゲーム』(学研プラス)、『勝てる脳、負ける脳』(集英社)など。
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