テニスのウクライナ選手たちが苦しい心情を吐露。「練習と戦争のこと、バランスをとるのが難しい」 (3ページ目)

  • 神 仁司●文・写真 text&photo by Ko Hitoshi

テニス界にも影響

 試合後には、TPC(テニスプレーヤーズクラブ)よりウクライナへ寄附金(金額非公表)の贈呈が行なわれた。TPCは、個人・非営利・ボランティアの精神で日本のテニス選手(ジュニア含む)を支援することに賛同した人たちが集まって活動している団体だ。有明コロシアム・センターコートでの寄付金贈呈式では、TPCの世話人であり、日本テニス協会理事待遇の青木弌(はじめ)氏により目録がミハイル・フィリマ監督に渡された。

 現在、国際テニス連盟(ITF)主催のBJKカップや男子国別対抗戦デビスカップでは、ロシアとベラルーシの参加を認めていない。

 一方、ワールドプロテニスの男子ATPツアーと女子WTAツアーでは、ロシア選手やベラルーシ選手は、国名や国旗の表示は許されていないものの、個人資格で参戦している。

 ただ、ウクライナ選手のなかには、個人資格での参加も認めるべきではないという意見もあり、日本人には計り知れない、ロシアに対するウクライナ人の憎悪の感情も見受けられる。ロシア人全員が悪人ではないことはわかっていても、当事者であるウクライナ人からすれば簡単に割り切れない部分もあるだろう。

 フィリマ監督も「ウクライナ人として、この状況が早く終わることを望むだけです」と語った。

 とかく日本では、ウクライナでの惨状を遠い異国での戦争だととらえてしまいそうになるが、ウクライナ人は、今この瞬間も、母国で理不尽な軍事侵攻によって命を失うかもしれない危険や日常生活を脅かされる可能性にさらされている。

 だからこそ、ウクライナのプロテニスプレーヤーたちが、東京で発してくれた言葉へ真摯に耳を傾けるべきではないだろうか。そして、再びウクライナに平和がもたらされ、ウクライナ人の当たり前であるべき日常が取り戻されることを切に願いたい。

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