錦織圭が挑むテニス界の新秩序。新時代の扉を開けてから8年後、同じ全米OPで最年少19歳の世界1位が誕生した (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

「革命の舞台」全米オープン

"ビッグ4"が初めてベスト4に顔を揃え、新時代の幕開けを告げたこの時以降、全米オープンにおいても彼らの支配が続いていたのは前述したとおり。

 ただ、それでもこの大会こそが「革命の舞台」であり続けた。

 2009年以降の優勝者を大会ごとに比べてみても、その傾向は明らかだ。

 この間ウインブルドンでは、ビッグ4以外の優勝者はいない。全豪オープンと全仏オープンなら、ナダルにジョコビッチ、フェデラー、そしてワウリンカの4選手がトロフィーを掲げてきた。

 ところが全米オープンでは、過去13大会で8名のチャンピオンが存在する。しかもそのうち、マリーを含む5名が、この大会でキャリア初のグランドスラムタイトルを掴み取っていた。

 新しいものを求めるニューヨークっ子の性向が、このような潮流を生むのだろうか。いずれにしても、新ヒーローの誕生を望むこの町の空気感は、若い選手たちも敏感に感じ取っていた。

 ルードは、ロッカールームの"チャンピオンウォール"に並ぶ歴代優勝者の写真を眺め、ふと「ここには、ほかのグランドスラムに比べて多くの顔があるな」と思ったという。特に一昨年のドミニク・ティーム(オーストリア)や昨年のメドベージェフの優勝は記憶に新しく、彼らとは年齢も近い。

「ならば、自分にもチャンスがある」

 ルードが抱いたその思いは、多くの若手が共有した希望や野心だったはずだ。

 今大会で「新時代の幕開け」を最も印象づけたのは準々決勝、5時間越えを記録したアルカラス対ヤニック・シナー(イタリア)の死闘である。

 元世界1位のファンカルロス・フェレーロの愛弟子であり、ナダルに憧れ育ったアルカラスは、スペインテニス界の正統後継者。対して、「アイドルはフェデラーとジョコビッチ」というシナーは、ジョコビッチ的なベースラインの安定感と、フェデラーに似たしなやかな攻撃力を兼備する21歳。

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