大坂なおみ、全仏オープン初戦の作戦を思わずポロリ。「なんでこれをしゃべっちゃったのかしら」 (3ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

逆境でこそ力を発揮するタイプ

 大坂の言う「作戦」とは、スピンをかけた高く弾むボールを打つ、ということだろう。先の対戦で痛感したように、アニシモバの持ち味は相手の球威を生かしたカウンターだ。

 そのアニシモバの武器を高い軌道の重いボールで封じるのが、大坂の基本戦術。クレーで有効なスピンショットの体得は、大坂がこの数年間、重点的に取り組んできた課題でもある。その成果を試す好機の訪れを、彼女は歓迎しているかのようだった。

 初戦の相手を聞き、「冗談でしょ?」と大坂が返したのは、久々にノーシードとして挑むグランドスラムで、いつも以上にドローを気にかけていたことに起因するようだ。

「実は数日前、私は初戦でイガ(・シフィオンテク/ポーランド)と当たる夢を見たの」

 シフィオンテクは5大会連続優勝という驚異の連勝街道を歩き、パリへと凱旋した現在の女王。今の大坂がノーシードである以上、それは在りえたカード。様々な"よくないシナリオ"が考えられたなかで、アニシモバは「対戦は嫌ではない」相手だった。

「私は敗戦から多くを学び、勝利へのモチベーションをかき立てられるタイプだから」というのが、その理由だ。

 1年前の会見拒否発言と、それに伴う棄権。直前に負った足首のケガと、前哨戦の欠場。そして、直近の顔合わせで敗れた選手と、初戦での対戦......。

 今の大坂が置かれた状況を書き並べれば、ややネガティブな言葉が並ぶ。ただ、本人も言うとおり、過去にも彼女は、逆境でこそ力を発揮してきた。

 フタを開けてみなければ、何が飛び出すかわからない----。そんな「大坂劇場」が観衆の注視のなかで幕を開ける。

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