大坂なおみの評価は世界で賛否様々。「政治のことを話すな」「戦う彼女を心から尊敬」「ミステリアスな人」 (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

若い世代はナオミに好意的

「2020年の全米オープンで、ブラック・ライブズ・マターを訴えるマスクを着用して優勝した時は、彼女を支援する声が大半だったと思います。ただ、昨年の全仏オープンで記者会見を拒否した頃から、批判も受けるようになりました。

 特に保守系のメディアは、彼女をやり玉に挙げることが多いですね。政治的アクションを批判したり、『会見はしないのに、雑誌などのメディアに露出するのは矛盾している』というのも、よくある指摘です」

 それら賛否両論の声があがるのは、彼女の一挙手一投足が大手メディアで取り上げられることが多いためだという。

 カリフォルニア州インディアンウェルズで開催されたBNPパリバ・オープンで、野次に傷つき試合中に泣き出したことも、そのひとつだ。

「インディアンウェルズの時も、ほとんどの大手メディアが彼女の話を取り上げました。『NYタイムズ』『ワシントンポスト』『LAタイムズ』......どの新聞もコラムでこの件を論じています。彼女の話題はテニス以上に、社会問題としてとらえられることが多いですね。

 ナオミに対し、『最近の若者はヤワだ』『プロならこれくらいの批判も受け入れろ』と言う人たちもいます。ただ、子どもや若い世代には、彼女は好意的に受け入れられていると感じます。アニメやゲームが好きというのも共感しやすいですしね」

 自身もそれら"アニメやゲームが好きな世代"に属するローゼンバーグ氏は、現在、大坂なおみの足跡を描く書籍の執筆に取り組んでいる。

「彼女はとても興味深い人物です。テニス選手としても、4度グランドスラムで優勝する力がありながら、メンタリティのもろさもある。会見やインディアンウェルズの一件など、多くの選手にとってそこまで難しい問題ではないことが、なぜ彼女をあんなに苦しめるのか?」

 それらを「解き明かすのが楽しみ」なのだと、ローゼンバーグ氏は言った。

「彼女を解き明かすのは、難しい。それは彼女自身ですら、自分が何者かを理解できていないことが、私は理解できるからです」

 そんな禅問答めいた物言いで、ヘレン・スコット-スミス氏は、大坂に自分の過去を重ねた。

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