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大坂なおみが紡ぎだす魔法の言葉。なぜ人を惹きつけるのか (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 今の私は、以前よりも広い視野を持ち、何をすべきか判断できるようになったと思う」

 憤りの構造を理解するプロセスを繰り返し、今の彼女はそれに対処する術(すべ)を体得しつつあるようだ。

 思えば今大会、大坂が「anger」という言葉を用いた発言に、次のようなものもあった。

「2年前にここで優勝した時、私は憤り(anger)を原動力にプレーしていたようなところがあった。テニス界に、自分の立ち位置を刻印したいと必死だった」

 怒りにも似た感情をブースターに、全豪オープン優勝、そして世界ランク1位にも到達した2年前。だが、その後の彼女を待ち受けていたのは、「世界1位であることを証明しなくては」「ロールモデルにならなくては」という、重圧の数々だった。

 今の彼女は、それらかつて味わった苦しみも、さほど感じていないという。

「私ができることは、私らしくあることだけだと気がついた。この世界には、ロールモデルにふさわしいテニス選手が500人はいる。今は、私をロールモデルとして見てくれる子どもたちと一緒に、自分も成長していきたいと思っている」

 さらには、周囲から寄せられる「期待」に対する解釈も、時を経て変容した。

「おかしなことに、私はもう『期待』を『重荷』だと捉えていないの。今までのがんばりがあるから、私は今の場所にいる。人々が私に期待するのは、私が何かを成し遂げてきたから。

 若い時の私に、過剰な期待をする人はいなかった。ランキングが上がるにともない、プレッシャーも感じるけれど、それは自分を高めるモチベーションにもなる」

 この大坂の思考法は、彼女も尊敬するテニス界のレジェンド、ビリー・ジーン・キングが残した「プレッシャーは、特権である」の名言に通ずるものだろう。

 期待をモチベーションに変える大坂の活躍は、優勝という形で歴史に刻印されていく。グランドスラム決勝の戦績は、この2年半で4戦4勝。

 その勝負強さの理由を聞かれ、大坂は次のように答えた。

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