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錦織圭、全豪前に難局。コロナ隔離後アスリートに生じるリスクとは (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 対して完全隔離となった72人の選手たちは、一般の入国者と同様に、ホテルの部屋から一歩も出ることはできない。食事は一日3度、部屋のドアの前に運ばれたものを自室で食べる。対人での物の受け渡しは許されず、清掃サービスも入らない。

 つまり14日の間、人と接することすらない。唯一の例外が、毎日行なわれるPCRテストだ。

 また、選手が滞在しているホテルには、2部屋が扉でつながっている構造のものがあり、その間の往来は許されている。選手の多くはこのシステムを利用し、トレーナーやコーチとのコンタクトはできるようにしているようだ。

 テニスオーストラリアは、スピンバイクなどのトレーニング器具を完全隔離された選手たちに供給し、Zoomでのトレーニング指導やヨガ教室を連日開催。選手たちも互いにインスピレーションを与え合うかのように、創意工夫を凝らした室内練習の様子をインスタグラムなどにアップしている。

 とはいえ、室内練習では限界は否めない。心配されるのは、プレー再開後のケガだ。

 渡航直前にコロナ感染が発覚し、今大会は欠場するアンディ・マリーのトレーナーは、そのリスクに警鐘を鳴らす。

「トップアスリートの身体は、精密にチューンアップされたスポーツカーのようなもの。常日頃からトレーニングを積んでいる彼らの肉体は、動きを止めると、種々の問題が生じてしまう。試合前は戦術面も含め、急ピッチでテニスを仕上げていきたいところだが、2週間の休息後に急激に身体を動かすのは、とても危険だ」

 そう説明するトレーナーのマット・リトル氏が、わけてもケガのリスクが高いと指摘する動きが「サーブ」、それも「打ったあとの腕の減速」だという。

 サーブを打つ際、選手は下半身から生み出すエネルギーを、肩、腕、そしてラケットと伝えていく。短時間で腕の動きは急激に加速するため、最終的にはその動きを、背中や肩の背面の細かい筋肉でつなぎとめ、減速することになる。この減速時の運動は身体への負荷が高く、また、トレーニングだけでは鍛えることが難しいというのだ。

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