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大坂なおみ、呪縛からの解放。
敵もお手上げの完璧テニスで優勝へ弾み (2ページ目)

  • 神 仁司●文 text by Ko Hitoshi
  • photo by AP/アフロ

 さらに、大坂はサービスエース7本を含む24本のウィナーを決めたが、特筆すべきはあれだけレベルの高いパワーテニスを披露しながら、ミスをわずか8本に抑えたことだ。ロジャースが果敢に攻めながら23本のウィナーを放ちながらも、28本のミスを犯したのとは対照的だった。

 準々決勝での圧倒的な大坂のテニスは、試合後のロジャースの言葉に集約されていた。英語で"flawless(完璧な)"という単語を使ったが、これは対戦相手のテニスへの最大級の褒め言葉だ。

 2年前のように大坂の快進撃が続く中で、今回は日本メディアだけでなくアメリカメディアからも高い注目が集まり、大坂にスポットライトが当たっている。

「前回よりも、精神的にちゃんと物事をより認識できていることを自覚しています。前回準決勝に進出した時は、ある意味赤ん坊のようでした」

 2年ぶりにUSオープン準決勝へ到達して、こうして大坂が落ち着いて自分の現在の立ち位置を語れるようになったのは、昨シーズンの苦い経験があったからではないだろうか。

 2019年2月に、ともに優勝を喜んだアレクサンドラ・バインコーチと袂を分かってからしばらく大坂にとって試練の時間が続いた。初めて登り詰めた世界ナンバーワンの地位は、彼女に自信をもたらすというより、プレーに悪影響を及ぼす呪縛のようになってしまっていた。

「昨年はいつも結果と照らし合わせる自分だった」と振り返った大坂は、当時、そんな自分の思考を、自分自身で抑制できないでいた。それが重なり負のスパイルに陥って9月まではツアーでの優勝からも遠のいた。2019年USオープンの後には再びツアーコーチを変え、暫定的なコーチとして父親のレオナルド氏とともに戦った。家族のように思うチームメンバーの悲しむ顔は見たくないという一心でプレーしながら、大坂は自分のテニスを取り戻していった。

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