2019.10.04

ジョコビッチ来日の真の理由。
悲願達成へ早くも「準備」を始めている

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 世界1位のノバク・ジョコビッチ(セルビア)がやってくる――。その高揚感は、大会が開幕するよりも早く、開催地・有明テニスの森を厚く覆っていた。

 過去にロジャー・フェデラー(スイス)、ラファエル・ナダル(スペイン)、アンディ・マリー(イギリス)ら、いわゆる男子テニス界の「ビッグ4」も顔を揃えてきた同大会だが、そこに唯一欠けていたピースがジョコビッチだ。

ジョコビッチを見たさに大勢のファンが有明にやってきた その現世界1位がついに今年、楽天オープン初参戦。まだ本戦の始まらぬ週末の時点ですでに、ジョコビッチの練習をひと目見ようと多くのファンが有明に足を運び、そのプレーの質の高さと緊張感に、あるいは柔和な笑顔でファンサービスする姿に、感嘆と感激の声を漏らしていた。

 ただ、その世界1位の参戦は、直前まで不確かなものでもあった。

 約1カ月前のUSオープンで左肩を痛めていたジョコビッチは、同大会を4回戦で途中棄権している。以降は約3週間ラケットを握らず、練習を再開したのは楽天オープン開幕のわずか1週間前。しかもその時点では、「肩の痛みはないが、東京大会に出られるかどうかは、まだわからない」という状態だった。チームスタッフや医師とも相談のうえ、最終決断を下したのは先週の水曜日のことだ。

 そのようにギリギリまで悩みながらも、最終的に彼が来日を決意した背景には、ある「悲願」がある。

 それは来年、東京で開催されるオリンピックで、最もいい色に輝くメダルを手にすること――。その本番を迎える前に、オリンピック開催地となる有明コロシアムやその周辺の環境、そして東京の街を知っておきたいとの狙いが、彼にはあった。

「四大大会」すべてを制し、さらには全9大会の「ATPマスターズ1000」と、国別対抗戦「デビスカップ」まで手にしたジョコビッチは、早くもテニス競技の歴史上、最高の選手のひとりに数えられている。選手にとっての強さと支配力の指標である「年間最終ランキング1位」も5度を数え、今シーズンもこのままトップを維持すれば、ピート・サンプラス(アメリカ)が持つ史上最多記録に並ぶ。