錦織圭が取り戻した天性のタッチ。未来に向けてさらに必要な要素は? (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 タイブレークでは先にポイントを失った錦織だが、直後に追いつく好機を得る。ストロークで優勢に立った錦織は、力なく浮きあがった相手の返球を、余裕を持って強打した。だが、決めなくてはとの思いが手もとを狂わせたか、打球は大きくベースラインを越えていく。

 さらにはその5ポイント後にも、狙いすましたドロップショットがわずかにサイドラインを割った。最後はワウリンカのバックの強打に押し込まれ、1時間9分を要した第2セットも、掴み取るには至らなかった。

 勝負に「たら・れば」は禁物である。ワウリンカの視点に立てば、第2セットの終盤でわずかにラインを割った幾つかのショットが入っていれば、より早い段階で試合を決められたという見方もできるだろう。ただ、タイブレークでの錦織のスマッシュとドロップショットのミスほどに、超満員の客席からため息がこぼれた場面がなかったのも、また事実だ。

「タイブレークを取れていれば、さらに(自分のプレーが)よくなったかもしれません。惜しいミスが2個、3個とあったので......惜しいというか、取れていればチャンスはあったのかなという試合でした」

 錦織も試合後に、その局面を悔いた。

 4大会で2勝しかできなかった2月中旬~4月中旬の苦しい時期を経て、ここ2大会で錦織が調子を取り戻してきているのは間違いない。時間を持ってボールを打てる赤土のコートで、錦織の創造性や天性のタッチが引き出されている感もある。

 それらを勝利につなげるカギは、この日のワウリンカ戦、あるいは2週間前のバルセロナ・オープン準決勝の最終セットでリードしながら逆転を許したダニール・メドベデフ(ロシア)戦のように、競った局面で取るべきポイントを取ることだろう。

 そのために必要なひとつの要素として、錦織は「自信」を挙げた。

「自分のプレーが安定すれば、自然と自信はついてくる。今日は、乗り越えていればというところで、取りきることができなくてチャンスを逃した」

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