2019.01.21

錦織圭との濃密な6年間。
トレーナーが語る「ケガをしてよかったこと」

  • 内田暁●取材・文・撮影 text & photo by Uchida Akatsuki

「錦織圭を6年間支え続けたトレーナー」

 中尾公一氏の肩書を短く説明すると、そのような言葉になるのだろう。就任したのは、2013年シーズンから。その後、2014年の全米オープン準優勝や、2016年のリオデジャネイロオリンピック銅メダル獲得など、錦織の活躍の背後には、常に中尾氏の存在があった。

 では、実際に長いツアー生活をともにするなかで、中尾氏はどのような役目を担い、22歳の青年がトップ10の常連になるまでに、いかなる日々を過ごしてきたのだろうか?

 錦織の進化を支えた濃密なる時の蓄積を、本人に紐解いてもらった。

2013年シーズンから6年間、錦織圭のトレーナーを務めた中尾公一氏「私がやるのは、ケガの予防的なコンデョショニングです。コンディショニングとは、テニスのスキルを上げるためのトレーニングとは、また少し違うものです。目的の方向性が違うので、メソッドも違ってきますが、最終的なゴールは同じ。ですから、分けられないところはありますし、連動もしています。

 大会中の私の主な仕事はトリートメントであり、それは身体の状態をリセットすること。マッサージで疲れを取ることが中心になり、必要に応じて針を打ったり、痛い箇所に運動療法を入れます。

 疲労を取るためには、これは個人的な考えでもありますが、基本的には睡眠と食事を取ることしかない。人はただ座っているだけでも疲れます。では、マッサージの役目は何かというと、疲労回復因子を産生させ、老廃物や疲労因子を取り除き、栄養を全身に送るために血行をよくすることです。血液が栄養を運ぶので、筋肉の硬い部分をほぐして血行を隅々まで行き渡りやすくします。

 ただ、マッサージをやりすぎると、結局は他動で運動をしていることになるので、それは疲労(もみかえし)になるんです。ですので、どこまでやるかを見極めることが大切になってきます。

 試合前にはもちろん、選手に同行して会場に行き、ストレッチやしたりウォーミングアップを見ます。これらはルーティーンが決まっているので、最近では私がとくに口出しすることはありません。