フェデラー撃破から一転。錦織圭は「今季最悪」のどん底から蘇るか?

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

「テニスというのは、おかしなスポーツだ」と言ったのは、錦織圭に快勝したケビン・アンダーソン(南アフリカ)である。

 錦織とアンダーソンは、今季すでに3度対戦。2月の試合では、最終セットのタイブレークにもつれこむ死闘の末に、勝利はアンダーソンの手に渡った。星を分け合った直近の2試合も、いずれもわずかなチャンスをモノにしたほうが勝者となっている。

アンダーソンのプレーに対応できず、完敗を喫した錦織圭アンダーソンのプレーに対応できず、完敗を喫した錦織圭 そのように接戦を重ねてきたふたりだが、今回のATPツアーファイナルズでの再戦は、アンダーソンの6-0、6-1という一方的な内容に終止した。前述したアンダーソンの「おかしなスポーツ」は、その結末を受けての発言。

「たった1日ですべてが変わることがある。大会で優勝したかと思えば、その翌日には調子が悪くもなり得る」

 テニスのプレーとは、時にそのように水モノだと、32歳の十年選手は穏やかな口調で述懐した。

「It wasn't my day today(今日は調子が悪かった)」

 24本を数えたミスの理由を問われると、錦織はこの言葉を幾度か口にした。

 質疑応答が日本語に切り替わった後には、「感覚が取り戻せなかった」とも繰り返す。その2日前のロジャー・フェデラー(スイス)戦後にも錦織は、飛びやすい公式ボールを制御する難しさに言及したが、その感覚のズレはいまだ埋められていない様子だった。

 加えてこの日のアンダーソンは、77%というファーストサーブの高確率に象徴されるように、武器のサーブが絶好調。時速130マイル(約209キロ)超えの打球は10本のエースを生み出し、錦織がなんとか打ち返しても、アンダーソンは203cmの長身の腰を深く落とし、間髪入れずに低い軌道のショットを鋭角に打ち込んでくる。

「時間の余裕をもってプレーさせてもらえなかったので、終始焦らされるというか、ゆっくりやらせてもらえなかった」

 適応力の高い錦織が最後まで立て直すことのできなかったその訳は、アンダーソンが「キャリアベストのひとつ」と自画自賛する、圧巻のプレーにもあった。

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