2018.07.01

今年も期待大。ウインブルドンが
大坂なおみに向いているワケ

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 テニス界に短いグラスコートの季節が訪れたとき、多くの選手にとって、最後にプレーした芝の記憶はウインブルドンでのそれである。

 20歳を迎えた大坂なおみにしても、それは例外ではなかった。6月上旬、約1年ぶりに芝のコートを踏んだ大坂の胸に蘇ったのは、昨年のウインブルドン1番コート――3回戦で、憧れの存在であり同大会5度の優勝を誇るビーナス・ウィリアムズ(アメリカ)と戦った試合だった。

大坂なおみが聖地ウインブルドンに帰ってきた「今年のノッティンガムで試合をしたとき、あのウインブルドンのことを思い出していた。あれが、私が芝で最後にプレーした試合だったから。覚えているのは、私はすごくすごく、いいプレーをしたということ。芝のコートで、彼女(ビーナス)と試合したのだから……」

 記憶の糸をつむぐ彼女は、目尻を下げ、口角を上げながら、ふと続ける。

「あれは子どものころに、いつかやりたいって夢見ていたような試合だった」。

 日本で姉とともにボールで戯(たわむ)れ、アメリカのニューヨークに渡ってから本格的にテニスを始めた大坂にとって、テニスコートといえば、それは青く塗られたハードコートだった。

 全米オープンは多くの夢の記憶がつまった身近な大会だが、ウインブルドンは物理的にも心理的にもどこか遠い。アンドレ・アガシの試合をテレビで見たのは覚えているが、感情に深く焼き付く思い出は、この大会に関しては特にないと大坂は言った。

 だから、彼女にとってのウインブルドンの記憶とは、自らが体験したものだ。一昨年はケガで欠場したため、去年初めて足を踏み入れた”テニスの聖地”。日ごろは黒や濃紺のウェアを好んで着る彼女は、ウインブルドンの伝統に従い身にまとう純白のウェアに、気恥ずかしさを覚えたという。