軽いラケット、柔らかいボールから、錦織圭の復活はもう始まっている (4ページ目)

  • 神 仁司●文・写真 text & photo by Ko Hitoshi

 そして、錦織のコーチであるマイケル・チャンも復帰を心待ちにしている。

「2018年に、圭がケガから復帰することを待ち望んでいます。これからキャリアの後半へのスタートを切ることになると思います。まずは、100%健康になること。圭のベストはこれからだと思うので本当に楽しみにしています」

 現在、錦織は、2018年ツアー開幕週のATPブリスベン大会(1月1日~)、ATPシドニー大会(キャリア初エントリー、1月8日~)、グランドスラム初戦・オーストラリアン(全豪)オープン(1月15日~)、ATPニューヨーク大会(2018年より新設、2月12日~)、ATPアカプルコ大会(2月26日~)にエントリーしているが、どこで復帰するかは定まっていない。

「自分の中で治ったと思えば、出るだけ。ドクターやトレーナーにはわからない感覚なので、僕自身がテニスをして、手首に100%痛みがなければ、出られる。それがいつ来るかはまだわからないので、復帰の目途は立ちません」

 復帰してから痛みが再発する可能性も考慮している錦織だが、現状を踏まえると、オーストラリアンオープンには間に合わないように思える。通常、ケガのない選手は11月にしっかり休息を取り、12月から限界まで自分を追い込む練習をして、1月第1週の開幕に備えるのがパターンだからだ。

 今回の錦織の復帰は慎重すぎるほどでいいと思う。ケガの箇所が、ラケット操作の要である右手首であり、彼が来季28歳でプロ11年目を迎えるベテランだからだ。

 ただ、今の錦織は自分にケガの多いことも受け入れたうえで、そこから解決策を見い出そうとしていて、今までにない落ち着きが見られる。メンタル的にもしっかりリセットできているようで、復帰過程にある選手とは思えないほど表情が明るい。彼のスポンサー関連の「スポーツ義足体験授業」では、実に楽しそうに小学6年生の子供たちと接していて、こんな無邪気で素直な錦織を見るのは、いつ以来だろうかと感じたほどだ。

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