内山靖崇がマクラクラン勉と出会い、楽天OPで優勝するまでの道のり (4ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 成都大会で敗れたマテ・パビッチ(クロアチア)は、内山がマクラクランと組んで出場した7年前の全仏ジュニア時にシングルスで敗れた相手である。あるいは、同年の大阪スーパージュニアではシングルス決勝で勝った選手であり、なおかつダブルスではともに頂点に立ったパートナーでもある。まさにライバルと呼ぶにふさわしい存在だが、プロ転向後のパビッチは徐々にダブルスに特化したキャリアを歩むようになっていた。

 そのパビッチに内山は2週間前、果敢なネットプレーを仕掛けられて敗れたという。「ガンガン前に出てくる」相手に気圧(けお)されたその敗戦後、内山とコーチは「ベースラインから下がらない」という課題に徹底的に取り組んだ。「最初はやりにくさも覚えていたが、下がらないプレーが様(さま)になってくると、気持ちでも下がらなくなった」と増田コーチは言う。

 そのプレー面での取り組みに、信頼できるパートナーと「常にチャレンジャー」の心の持ちようが重なり、内山の潜在能力が発揮されたのが、昨年の世界最強ペアであるジェイミー・マリー(イギリス)/ブルーノ・ソアレス(ブラジル)を破って頂点に駆け上がった今大会だ。

「テニス人生で、一番いい大会だった」

 少年時代からつながる縁を手繰り、掴んだ栄冠を、彼は感慨深げに振り返る。

 ただそれは、あくまで"ここまでの"テニス人生での話。動き出した歯車を加速させ、さらなる「一番いい大会」を求める道が、ここからさらに続いていく――。

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