内山靖崇がマクラクラン勉と出会い、楽天OPで優勝するまでの道のり (3ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 現在シングルスランキング190位、ダブルスは133位の内山は、少年時代から将来を嘱望されてきた選手である。錦織圭と同様に盛田正明テニスファンドの援助を受け、13歳時にフロリダ州のIMGテニスアカデミーに留学。183cmの恵まれた体躯から繰り出す強打に加え、ボレーなども器用にこなす柔軟性を備えた大器は、全豪オープンジュニアダブルス準優勝や大阪スーパージュニア単複優勝など、その才能に見合う数々の栄冠を手中に収めてきた。

 だが、プロ転向後は思うような結果を残せぬ雌伏(しふく)の日々を強いられる。上り調子のときにケガを負う不運が重なったこともあった。デビスカップにダブルス要員として呼ばれることが多いため、シングルスに絞りきれず迷いを抱えてもいる。「練習では錦織にも打ち負けないプレーをするが、試合になると弱気な一面が顔を出す」。コーチや関係者が、そのようにこぼすこともあった。

 その内山が今回の楽天ジャパンオープンではシングルスで初戦を突破し、ATP初勝利を奪取。「精神的にもプレーの面でも引かなかった」と、静かな口調に矜持(きょうじ)を込めた。

 それら、内山が今大会で見せた「引かない」プレーの端緒にも、過去からつながるひとつの敗戦があったと、コーチの増田健太郎氏は明かす。

「2週間前、ATPツアーの成都大会の予選1回戦でダブルス専門の選手に負けたんです。ジュニアのころからよく知る......でも、シングルスなら勝たなくてはいけない相手だった」

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