杉田祐一はコートで笑っていた。全米オープン前に掴んだ勝利の方程式 (4ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by Getty Images

「伸び盛りの若手と、こういう舞台で対戦できるのはなかなかないこと。彼もガンガン打ってきたので、それを何本でも返してやるぞと思いながら、本当に楽しくできました」

 しかも杉田は試合中盤で、相手が「すごく嫌がっている部分」を完全に「掴んだ」という。その弱点をつき、ハチャノフの武器を壊して得た勝利は6-7、6-3、6-3のスコア以上の完勝だった。

 しかし迎えた準々決勝で、杉田は最終的に同大会を制したグリゴール・ディミトロフ(ブルガリア)に2-6、1-6で完敗を喫する。最大の敗因は、杉田のカウンターを封じるべく相手が多用したスライスに対応しきれなかったこと。ここまでの3試合、いずれも「自分のテニス」で勝ち上がってきた杉田には、「綺麗に(ラケットをボールに)当てたい」との思いがあった。その手のひらの心地よい記憶が、自分自身への過剰な「期待」となったようだ。

「もっと泥臭くいくべきだった」。のちに杉田は、そう省(かえり)みた。

 この「自分に期待しすぎた」が故(ゆえ)の敗戦は、杉田にある試合を思い起こさせたという。

 それは、今年5月のバルセロナ・オープン準々決勝のドミニク・ティエム(オーストリア)戦。このときも杉田は1-6、2-6のスコアで敗れていた。

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