ジャイアントキリング連発!170cmの西岡良仁が「ダビデ」になった日 (3ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by Getty Images

 最終ゲーム......相手の強打をしのぎ続けた16本のラリーの末に、最後はベルディヒがスマッシュをネットにかけたシーンが、この試合を象徴する。38度を記録した猛暑のなか、2時間22分の死闘を制し前のめりに倒れる西岡の姿を、涙をぬぐい見つめる馬木純也トレーナーの姿が、奇跡の価値を物語っていた。

 その西岡の試合をテレビで見ていた錦織圭は、「僕がやるにしても、タフな相手だろうな......」と、苦戦を強いられるベルディヒの姿に自分を重ねていたという。錦織は今や西岡を、単なる後輩として見てはいない。いつの日か対戦するであろう、同じステージに立つ者として認めていた。

 その錦織と「マスターズのベスト16に日本人がふたりもいるなんてすごいね」と言葉を交わしたことが、疲れた身体にエネルギーを注いだだろうか? 4回戦でスタン・ワウリンカ(スイス)に立ち向かう西岡は、連戦の疲れを感じさせぬ躍動感あふれる動きでボールを追い、スピンをかけた弾むボールでワウリンカのリズムを根底から揺るがした。一方、長い打ち合いに焦れて強打を試みては、ミスを重ねる世界3位......。

「深いボールで攻め、相手の弱いところを突く戦術」を遂行した西岡が第1セットを奪取。第2セットは取られるも第3セットで先にブレークした西岡が、自分のゲームをキープすれば勝利する機を2度までも迎えていた。しかしそれらのゲームでは、いずれも浅くなったボールを相手に叩かれてブレークされる。

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