錦織圭が残したリオ五輪の余波。日本人選手、それぞれの成長物語

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

「自分も準優勝したUSオープン(2014年)のときは、体力はもちろん、メンタルが疲れたよ」

 その言葉を聞いたとき、土居美咲は、「あっ。錦織圭でもそうなんだな」と思ったという。

土居美咲は今年の全米オープンにシード選手として挑む土居美咲は今年の全米オープンにシード選手として挑む 今年6月のウインブルドンで、土居はこれまでひとつの目標にしていた「グランドスラム2週目(4回戦以降)」に到達した。その、初めて足を踏み入れた領域で実感したのは、体力以上に襲ってきた精神面での疲れ。今年は雨天による試合中断や順延が多かったことも、蓄積する疲れを増量させた。

 そのときに土居が思ったのが、すでにグランドスラム2週目の常連となっている錦織には、「2週間を戦い抜くうえでの、メンタルの疲れはないのかな......」ということ。

 最近の土居は、日ごろのツアーでも錦織と顔を合わせ、ともに食事に行くこともある。だが、そのようなときには、あまりテニスの話はしない。しかしオリンピックは、状況が少々違う。日本選手全体に"チームジャパン"だという一体感があった。一緒に過ごす時間も、いつも以上に多い。そこで思い切って、聞きたかったことを聞いてみた。その際に返ってきたのが、先述した言葉だったという。

「錦織君の場合だと、1~2回戦はある程度、楽に勝てる域にいる。そういう部分もあるし、経験を積んで、戦い方を学んで......一歩ずつ、ステップ・バイ・ステップだと言われました」

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