マスターズ準決勝。錦織圭は「2年前の忘れ物」を取りに戻る (3ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki   photo by Getty Images

 失言・暴言で何かと世間を騒がす20歳は、コート上の姿も奔放だ。ムチのようにしなやかな193センチの長身をしならせて高速サーブを放ち、時に一瞬にネットに詰めるやダイナミックなボレーを決める。そうかと思えば、ベースライン後方からアクロバティックな股抜きショットや、ネットの横を抜く"ポール回し"を叩き込むことも......。特に今大会ではサーブが好調で、準決勝までの4試合で決めた総エース数は42本。これは全参戦選手中、2位(1位はモンフィス)の記録である。

 錦織とキリオスの対戦は、昨年10月の上海マスターズ2回戦のみで、そのときは錦織が1-6、6-4、6-4で逆転勝利。苦戦した最大の理由は、戦前に想定していたキリオスのプレースタイルと実像に、「ギャップがあったため」と錦織は言う。

 サーブは「思っていた以上に良く」、スピードのみならず、コーナーに打ち分けるプレースメントにも手を焼いた。逆にストロークでは、「思ったより攻めてこなかった」と戸惑いを覚えたように、緩急織り交ぜ、長い打ち合いにも挑んでくる。前衛的な言動やファッションとは裏腹に、台頭著しい20歳のプレーの根幹を築くのは、「クラシカルで正統派なテニス」かもしれない。

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