錦織圭が「迷い」を振り落としたベルディヒ戦での分岐点 (3ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki   photo by Getty Images

 そのような思いは、皆が「遅い」と口を揃える今大会のサーフェスで戦ったとき、自信へと昇華する。得意のフォアでは、鋭角のクロスを効果的に用い、相手をコートから追い出してストレートに強打を叩き込んだ。ドロップショットで相手を前につり出し、ロブで196センチの頭上を抜く場面も幾度か見られた。ボールに身体ごとぶつかるように打ち込む強打で、奪ったウイナーは17本。軽やかに躍動する、強い錦織の姿だった。

 第2セットも、最初のゲームをいきなりブレーク。5ゲーム連取で、流れは完全に錦織である。ところが第4ゲームをダブルフォールトで落としたことで、流れは180度、反転した。ベルディヒの強打がことごとくコーナーをとらえ始め、今度は相手が5ゲーム連取。

「本当に、こんなに急に変わるんだな……と思うほどに流れが変わった」

 変わった流れのなかで、反撃の機を掴めぬまま落とした第2セット。それでも彼は、「自分のミスのせいでもあった」と、どこか冷静だったようだ。「もう一度、第1セットのように攻めていこう」「ミスを減らし、安定感も高めていこう」と言い聞かせて臨んだファイナルセットは、調子を上げたベルディヒと五分に組み合った。

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