全米オープン直前「ジョコビッチ包囲網」で勢力図に変化あり (3ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki   photo by AFLO

 はたしてその言葉を実践するかのように、フェデラーは決勝までの4試合で1セットも失わぬ盤石の勝ち上がりを披露。自身のサービスゲームのみならず、リターンゲームからでもネットに詰めて次々とボレーを決める「超攻撃テニス」が際立った。

 そして決勝でも、フェデラーは重要な局面ほど、リターンから目の覚めるような速攻テニスを見せつけた。第1セットのタイブレーク3-1の場面では、ジョコビッチのセカンドサーブに猛然と駆け寄ると、跳ね際をバックハンドで叩いてそのままネットへ。返球をボレーで叩き込み、試合の趨勢を決める重要なポイントを奪い取った。

「あれはとても良い作戦だったし、それがうまくハマったね」

 試合後にフェデラーはターニングポイントを振り返り、そしてこうも続けた。

「以前は基本的に、バックハンドではチップ(スライス気味にボールをカットする打法)し、攻撃はフォア頼りだったが、今ではバックハンドでいろんなことができるようになった」

 フェデラーのバックハンドは進化した――。これは本人も認め、それ以上に多くのライバルたちが口をそろえて証言する。

 フェデラーが自認しているように、以前はバックハンドが唯一の弱点だとされていた。特に、フェデラー戦で23勝10敗と圧倒的な勝率を誇るラファエル・ナダル(スペイン)は、フェデラーが高い打点でバックを打たざるを得ないように、サウスポーから繰り出す強烈なスピンで徹底して狙い、多くの勝利を手にしてきた。そして、このフェデラー攻略法に習い、勝利を得たのが、近年のジョコビッチやマリーである。

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