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錦織圭の転機は、全米OP準優勝の2週間後に訪れた (4ページ目)

  • 内田暁●構成 text by Uchida Akatsuki photo by AFLO

「しっかりコーチたちとも話して、最後まで打ち切ることと、自分で決め切ることを課題に、試合に入っていきました」

 マレーシア・オープン優勝後に錦織は、コーチから授けられた言葉を明かした。このアドバイスは、単に1試合に勝つための戦術ではなく、大会そのものを戦い抜く上での姿勢や心構えを指すものではなかったか。その結果、つかみ取ったタイトルは「250」というランキングポイントや、今季4つ目の優勝という数字では、到底測ることのできない価値を持つものだ。

 表彰式で思わずトロフィーを取り落としそうになったのは、極度の緊張から解き放たれた、安堵の表れだったろうか。取り囲むカメラが放つまぶしいフラッシュをひと通り浴びた後、錦織はコート上で、「チーム・ケイ」の面々と笑顔に包まれた撮影会を行なった。

 トロフィーを抱える優勝者をはさんで、ふたりのコーチとトレーナーが立ち、その周りでは、まだ幼いチャンのふたりの子どもが駆けまわる。優勝者とコーチ陣をフレームに収めるべくカメラを構えるのは、元選手だったチャン夫人のアンバーさんだ。

 チャンは錦織のコーチに就く際に、「これは普通、ルール違反かもしれないが……」との前置き付きで、家族の同伴を条件に出したという。錦織はその提案を快諾し、ツアー中はチャンの娘たちをあやすことも珍しくない。「圭を一番リラックスさせているのは、うちの子どもたちかもしれないな」。今ではそう言うほどに、愛弟子になついた子どもたちを横目で見ながら、カメラの前でチャンは父親の笑顔を見せ、錦織は心優しい青年の顔になっていた。

 アンバーさんが撮った写真に収まる、マレーシア・オープンのトロフィーを抱えた錦織と、チーム・ケイの見なれた面々――。この1枚こそが、「彼のキャリアのターニングポイントだった」と振り返る日が、近い将来、訪れるように思えてならない。

「2014年、錦織圭が変わった瞬間」(2)>>

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