全米で初のベスト8。錦織圭、6年間の確かな成長 (3ページ目)

  • 神仁司●取材・文 text by Ko Hitoshi photo by Ko Hitoshi

「第3セットが終わって、気持ちをリフレッシュするのが一番大変だった」と錦織は振り返ったが、サーブの調子が上向いていたのは好材料だった。錦織は、第3セット以降一度もラオニッチにブレイクポイントを許さず、逆に「少しずつリターンゲームでプレッシャーをかけられた」と、第4セットとファイナルセットを連取して、4時間19分に及んだ勝負を制した。

「(ニューヨークへ)来る前は考えられなかったけど、1回戦を勝った後、足の調子も良く、テニスの調子も良かったので、そこからは自分を信じてやれている。驚きもありますけど、十分勝てる相手ですし、最後まで踏ん張ってできたのはよかったですね」(錦織)

 錦織に帯同しているダンテ・ボッティーニコーチも初のベスト8進出を喜んだ。

「アメイジング! アメイジング! ここ数年取り組んできたハードな練習が報われました。圭は、本当に懸命に戦い、この勝利に値する選手です。そして、最後まであきらめかった」

 だが、トップ10定着とグランドスラム制覇を目指す錦織は、USオープンベスト8で満足し、立ち止まるわけにはいかない。

「決勝に行くまでは、なかなか喜べないですね。自分の位置を把握し始めていて、最近は『上までいかないといけない』というプレッシャーを自分にかけてやっている」

 さらに錦織にしては珍しく、自信をのぞかせるような力強い言葉も発している。

「勝てない相手は、もういないと思うので、できるだけ上を向いてやりたいですね」

 勝てない相手はもういない……。王者ノバク・ジョコビッチや錦織が尊敬するロジャー・フェデラーら、トップ選手への宣戦布告のようにも受け取れるが、今の錦織は、グランドスラムの頂点を見据えることのできる世界でも数少ない選手のひとりとして名を連れていることは間違いない。

 過去にグランドスラムを制覇した名選手達は、準々決勝からの戦いは別次元で、そこからが本当の戦いだと口をそろえるように語っている。今後、その別次元の舞台で、錦織の真価が問われることになっていく。

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