「ふたつの軸」で選手強化。日本テニス界に飛躍の兆し

  • 内田暁●文 text by Uchida Akatsuki 神仁司●写真 photo by Ko Hitoshi

 4月4日から6日にかけて東京・有明で行なわれたテニスの国別対抗戦――デビスカップ・ワールドグループ。ベスト4進出をかけた「チーム日本」の挑戦は、デビスカップ2連覇中の王者チェコの厚い壁に阻まれた。エースの錦織圭(世界ランキング18位)をケガで欠き、さらに2番手でチーム最年長の添田豪(134位)も体調不良でオーダーから外れた日本は、世界ランキング146位の伊藤竜馬と、急きょ召集した190位のダニエル太郎のふたりでシングルスを戦う厳しい台所事情。エースのトーマス・ベルディヒ(5位)を欠いてもなお、3人のトップ100選手を揃えた王者チェコ相手に、選手や監督たちも「力の差を感じた」と認めた上での敗退である。

左から内山靖崇、添田豪、ダニエル太郎、伊藤竜馬左から内山靖崇、添田豪、ダニエル太郎、伊藤竜馬 もちろん、「錦織や添田がいれば......」という、『たら』『れば』は残るものの、日本が勝ち上がってきた道程にも、カナダ戦で相手チームの1番手(ミロシュ・ラオニッチ/10位)と2番手(バセク・ポスピシル/28位)が欠場する運があった。チェコ戦後、植田実監督は、「結果としては『日本テニス史上初のベスト8』ではあるが、いろいろな運も重なった」と率直な感想を口にしたが、それも含めての、デビスカップである。

 さて、その「結果として日本テニス史上初」を成し遂げた最大の功労者が錦織であることは、誰も異存がないだろう。だが、日本テニス全体の底上げがあってこそのベスト8であることも間違いない。昨年は、地域予選的な位置付けである「アジア/オセアニアゾーン」を錦織抜きで戦い抜き、ワールドグループ昇格をかけたプレイオフの対コロンビア戦では、チームの命運が決する胃の痛む死闘を添田が制した。また、今季のベスト8進出により、日本は来年もワールドグループで戦えることが確定している。

 錦織が運んだ追い風は、日本テニスをかつてない高みに押し上げ、同時に世間の注目を集めてファンの足を会場に向かわせた。さらには6年後の「東京オリンピック開催」という、日本スポーツ界全体を浮上させる強烈な上昇気流も到来中。日本テニスは今、さらなる選手強化を実現させる、千載一遇のチャンスを迎えている。

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