【テニス】前人未到の全仏V8。ナダルが赤土で最強な理由 (4ページ目)

  • 内田暁●文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AP/AFLO

 6月3日生まれのナダルは、誕生日を全仏期間中に迎えるローランギャロスの申し子だ。ナダルが赤土に愛される理由――それは彼の実直さ、謙虚さ、そしてテニスへの愛情と敬意にある。

 そういえば今大会の会見中、こんな出来事があった。質問に答えようと記者に顔を向けたナダルが、隣の席に置いてあったマイクのスタンドを、指でクイッと押し下げた。記者に向けた視線をマイクがさえぎり、邪魔だったためである。例え年に何十回と会見を行ない、何百という質問を浴びせられようとも、相手の目を真っ直ぐに見て話す......ラファエル・ナダルとは、そういう男だ。
 
 史上最多となる8の全仏タイトルと、史上3位タイに並んだ12のグランドスラム。溢れんばかりの栄光を手にした優勝者に、「まだ、成長の余地があると思うか?」との疑問が投げかけられた。

 その問いに、ナダルはいつものはにかんだような笑みを見せて答える。
「もし成長できないなんて思っていたら、人生を何も分かっていないことになる。完璧なんて、この世に存在しないんだ」
 
 マヨルカで日が暮れるまでボールを追った頃の情熱は、27歳になった今も変わっていない。あの日の少年がナダルの心に居る限り、彼はこの先何度も、マスケティーズ・カップを噛み締めることだろう。

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