【テニス】クルム伊達が語るテニス論「寝るのも食べるのも仕事」

  • 内田暁●文 text by Uchida Akatsuki
  • 佐藤ひろし●写真 photo by Sato Hiroshi

42歳のチャレンジャーが今年にかける意気込みを語った42歳のチャレンジャーが今年にかける意気込みを語った 狙いすましたストレートへのショットがわずかにラインを逸れたとき、クルム伊達公子は思わず天を仰いだ。アメリカ・カリフォルニアで開催された『BNPパリバオープン』、ダブルス準決勝のことである。

 グランドスラムに次ぐ規模の今大会で、クルム伊達はケーシー・デラクア(オーストラリア)と組み、ダブルスに出場。2回戦では、グランドスラム2度の優勝を誇るサマンサ・ストーサー(オーストラリア)/リサ・レイモンド(アメリカ)組を破る快進撃を見せ、決勝進出をかけて第4シードのエカテリーナ・マカロワ(ロシア)/エレーナ・ベスニナ(ロシア)組と対戦していた。

 その試合のファイナルセット、10ポイント先取で勝敗を決めるタイブレークの7-6の場面である。クルム伊達のショットがわずかにアウトになって追いつかれると、その後の激しい攻防の末に、クルム伊達/デラクア組は6-4、6-7、8-10で惜敗する。決勝に届かなかったのは、わずか数センチの差により生じた、ほんの数ポイントの差であった。

 この敗戦を、クルム伊達は心から悔しがった。勝てるチャンスがありながら逃したことを、そして自分たちの些細なミスを......。

 同時にクルム伊達は、ダブルスでの好調を、シングルスにつなげたいとの思いも強く抱いている。紡(つむ)ぐ言葉の端々に、今、この瞬間に全力を尽くせている充実感と、次なる戦いへの手応えがにじんでいた。試合後、クルム伊達に今の心境を聞いてみた。

――ダブルス準決勝は、非常に惜しい試合でした。

伊達 最後の私のダウンザライン(サイドラインに沿って打ち返すストレートの打球)のミス、そしてマカロワのダウンザラインのショット。その2本が勝負の分かれ目になってしまいました。その前にも、ファイナルセットで5-3とリードしたときに、ケーシー(デラクア)がフォアでの勝負を避けて、ロブを多用していました。私的には、「あそこは行ってもいい」と思ったのですが、今日は彼女の調子があまり良くなく、自信がなかったのかもしれません。あそこで追いつかれ、そこからは私のダウンザラインのミスと、私がボレーをネットに掛けて......その2本が大きかった。

――それでも、デラクアとは初めて組んだ大会で優勝(2月3日のパタヤオープン)。2大会目となったBNPパリバオープンでは、グランドスラムに次ぐ規模でベスト4。何がうまくいっているのでしょう?

伊達 彼女はストロークがしっかりしていて、ボレーもできる。やればやるほどお互いの動きが分かってくるし、相手の良いところを引き出す動きも自然とできていると思います。ダブルスらしい試合ができている楽しさを感じているので、試合数をこなせているのは嬉しいです。

――今回のベスト4という結果は驚きですか? それとも想定内でしょうか?

伊達 両方ですね。ダブルスはパートナー次第というのもあるし、ドロー運もある。勝つときはいろいろな巡り合わせが必要ですが、それらが噛み合えば、チャンスがないわけではないと思っていました。去年はケガなどで体調が良くなかったので、ダブルスをやっていてもそこまでのレベルに行けなかった。でも、今年はシングルスも含め、疲労はあっても大きなケガを抱えていない。1月の全豪オープンでも調子が良かったので、チャンスがあるかなという思いはありました。

――復帰してからダブルスで、すでに3つのタイトルを取っています。シングルスとの比重はどのように考えていますか?

伊達 基本はやはり、シングルスがメインです。ダブルスで勝ち上がっていても、大会終盤になると、次のマイアミ大会(ソニーオープン)のことが頭をよぎり始めますし。(ダブルスは)シングルスのための技術向上であったり、シングルスでの感覚を良くするためというのがあります。

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