【テニス】錦織圭、全米オープン準備万端「ハードコート用に仕上げます」 (2ページ目)

  • 内田 暁●取材・文・撮影 text & photo by Uchida Akatsuki

 このように全米オープンで躍進の足跡を刻んできた錦織だが、ほぼ唯一、例外と言えるのが2011年だ。昨年の夏の錦織は、肩の痛みを抱えていたため試合ができず、その実戦経験の欠如を埋めるべく、全米オープン直前に連戦をこなした。結果、全米オープンでは腰の痛みを発症し、初戦で途中棄権。試合後には「グランドスラムの前は1週あけるのが理想なのだが......」と視線を落とし、調整の難しさを噛み締めた。

 その教訓は、今回の全米の入り方に、顕著に反映されている。8月上旬に2週連続で大会に出場した錦織は、その後フロリダの拠点に戻り、1週間かけて調整。そして週末にニューヨーク入りするという、昨年言っていた「理想」のスケジュールを組んできた。

 8月に出場したふたつのトーナメントでは、最初の大会は初戦敗退。翌週のシンシナティ・マスターズでは3回戦まで進出したものの、本人にしてみれば「完璧と言える試合はひとつもなかった」と、やや不満の残る内容だったようだ。

 その最大の理由は、北米ハードコートへの順応の難しさにある。今年はウインブルドンでオリンピックが開催されたため、例年より長い時間と試合数を、芝の上で過ごしてきた。そこから、ボールの跳ね方から足もとの感触まで大きく異なるハードコートに移ったため、「ショットにキレがないし、組み立て方の感覚もまだ戻らない」と感じていたのだ。

 だからこそ錦織は、「練習をしたいので、全米まで1週間あくのは良い」と断言する。バックの安定感を取り戻すこと、そしてフォアのタイミングをハードコートに合わせること......。8月27日の全米オープン開幕までに取り組むべき課題がはっきりしているからこそ、実戦よりむしろ練習コートでの微調整と、ショットの研鑽(けんさん)に時間をかけるべきだと分かっている。シード選手として過ごしてきた今季の経験と実績が、向かうべき道を明確に照らし出しているのだろう。

「練習でハードコート用に仕上げていきます」

 その力強い言葉とともに、錦織は光の指す場所へと歩みを進める。

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