2012.08.25

【テニス】錦織圭、全米オープン準備万端
「ハードコート用に仕上げます」

  • 内田 暁●取材・文・撮影 text & photo by Uchida Akatsuki

全豪とロンドン五輪でベスト8に入った今季。全米でさらなる飛躍に期待 喜びと悔しさ、感激や失意など、様々な感情に彩られた数多の試合の中から、最も強く輝く歓喜の光をたどったとき、錦織圭がたどり着くのはいつも、4年前のニューヨーク――。ナイトセッションの照明に浮かび上がる、ルイ・アームストロングスタジアムである。

 2008年、当時18歳の錦織が世界ランキング4位のダビド・フェレール(スペイン)をフルセットで破り、歓喜のあまりファミリーボックスに飛び込んだときの胸の高揚は、「一番エモーショナルで、頭に残っている」という。昨年、この時期に残した「全米になるといつも調子が出る」という言葉、あるいは「最も上位進出の可能性が高いのはハードコートの全米と全豪」という手応えも、恐らくはこの4年前の心身の感触が、今もリアルに残っているからなのだろう。アメリカに拠点を移して、はや10年。「アメリカは慣れた雰囲気だし、シンプルで過ごしやすい」というホーム感覚も、全米オープンへの思いが強い理由のひとつだ。

 現地時間8月23日に発表された今大会のドローも、そのような錦織の思いを後押しするものとなった。もちろん、「グランドスラムで簡単な試合や相手など存在しない」という大前提を踏まえてではあるものの、初戦、そして2回戦ともに予選突破者との対戦というのは、相対的に恵まれた組み合わせだと言えるだろう。

 仮にこの2試合を勝ち上がったとすると、順当に行けば3回戦での対戦相手は、マリン・チリッチ(クロアチア)となる。チリッチとは2010年の全米オープン2回戦で対戦し、酷暑の中、5-7、7-6、3-6、7-6、6-1という大接戦の末に錦織が勝利した。当時13位のチリッチから執念でもぎ取った1勝は、ひじのケガからの復帰後、最初につかんだ金星であり、錦織に大きな自信と確信を与えた試合である。

 一方のチリッチにとってこの敗戦は、低迷のトンネルへの端緒(たんちょ)となった。それでも今季は復調し、一時は30位台まで落としたランキングも、今回の全米では13位まで戻している。両者の過去の対戦成績は、錦織の2勝1敗。1歳年長のチリッチは錦織にとって良きライバルであり、互いのキャリアの重要な局面において交錯する相手でもある。2年前と立場を変えての再戦が実現すれば、それは両者にとっても、再び大きな転機となるかもしれない。