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ラグビー日本代表の新世代SOは「早慶戦で一度も勝てなかった男」 25歳「いちご」の本心 (3ページ目)

  • 齋藤龍太郎●取材・文 text by Saito Ryutaro

【みんなのいいところを盗む】

 苦悩する中楠をおもんぱかったのか、ブラックラムズでコンビを組む元ニュージーランド代表で世界屈指SHのTJ・ペレナラは、シーズン最終後の会見で中楠と伊藤を比較しがちなメディアを牽制した。

「(伊藤)耕太郎はすごくいいですね。ただ、日本のメディアは今のようなコメントを切り取って、耕太郎と(中楠)一期を勝手に比較しています。最近は耕太郎とプレーしていますし、すごくいい選手なので一緒にプレーするのは楽しいのですが、スタイルに違いがある一期とのプレーが楽しくない、ということではありません」

 中楠が伊藤よりも劣っているわけでは断じてない──。世界を知るペレナラはそう言いたかったのだろう。なにより公式戦の8割近くで先発し、ペレナラとハーフ団を組んだ事実が中楠の非凡さを物語っている。

 そんな苦しい時期を乗り越えた中楠は、自身2度目の日本代表合宿でSOとFBに取り組んでいる真っ最中だ。本職のSOには、中楠と同学年で2023年のラグビーワールドカップを経験した李承信と、オーストラリア出身の30歳のサム・グリーンがいる。

「個々のプレー、スキルをビデオで見返すのですが、特に10番の選手はそれぞれ違うスタイルがあるので、みんなのいいところを盗みながら自分の引き出しが増えていけばいいと思っています」

 李は日本代表でSOとFBを任されてきた実績の持ち主で、宮崎合宿では所属するコベルコ神戸スティーラーズと同じCTBにも取り組んでいた。複数のポジションをカバーできる多才な選手で、純粋にSOとしてのパフォーマンスも高い。

 さまざまな面で中楠はライバルたちと競い合う。だが、ほかの選手よりも早い5月の段階からジョーンズHCの下で研鑽してきたことから、チームを牽引するリーダーシップに関しては一日の長がある。

「チームに対して発言することや、リーダーシップ、練習の態度、そして能力面の成長は認めてもらっていますし、自分でもそれを実感しています」

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