ラグビー田中史朗が歴史的勝利を挙げた2015年W杯南アフリカ戦を振り返る「恐れることはなかった」 (2ページ目)

  • 齋藤龍太郎●文 text by Saito Ryutaro

【選手たちの意識が大きく変わった】

──あの一戦がのちに与えた影響は絶大でした。

 若手の成長につながったと感じています。当時大学生だった(のちに日本代表として2019年、2023年大会に連続出場する)松田力也選手(前・埼玉パナソニックワイルドナイツ)も姫野和樹選手(現・トヨタヴェルブリッツ)も帝京大学の寮で試合を見ていたそうで、鳥肌が立って寝られなくなったと言っていました。

 彼らが「自分たちもやらないといけない」と奮起して成長し、今は日本代表として活躍しています。そういう選手がもっともっと増えて、さらに日本代表の歴史を作っていってほしいです。

──2016年はハイランダーズでもう1年プレーし、2017年からは日本のスーパーラグビーチームであるサンウルブズで活躍されました。日本のラグビーがステップアップしていった感触はありました?

 2019年W杯日本大会までの4年間は、選手たちの意識が大きく変わりました。若手選手の成長ぶりも目を見張るものがありましたし、だからこそ日本大会でも結果を残せたのではないかと思っています。

──その2019年のW杯日本大会、それまでほとんどの試合で先発してきた田中さんは全試合リザーブから途中出場となりましたが、優勝候補のアイルランドとの一戦(○19-12)では逆転トライにつながるアタックの起点になるなど勝利に貢献しました。

 大会開幕戦のロシア戦(○30-10)は緊張からミスが多発してしまいましたが、2戦目のアイルランド戦はシンプルに楽しかったです。前半、みんなが相手を疲れさせてくれて、僕たちはずっと動き続けられていたので、純粋にラグビーを楽しめました。

──初の決勝トーナメント進出がかかった4戦目のスコットランド戦(○28-21)はいかがでしたか?

 前半でほとんど決まりましたね(前半終了時点で21-7。後半3分時点で28-7)。前半だけ見れば日本のラグビー史上でもトップクラスの試合運びだったと思います。ただ、後半は気が抜けたような試合になってしまい、僕自身のパフォーマンスも全くよくなかったので、今後も強い相手と戦う時にあのような試合をしてしまうとさらに上のレベルにはいけないな、という反省が残りました。

──日本代表のジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチ、トニー・ブラウン アタックコーチ(いずれも当時)はハイランダーズでもコーチとしてコンビを組んでいました。

 ずっと一緒にやってきた彼らが考えていること、やりたいラグビーは基本的には理解していました。そこにさらに、ジェイミーが試合前に熱い言葉をかけてくれたので、みんなの士気が上がったのではないかと思います。

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