ラグビーW杯ライバル分析《前編》 初戦チリの弱点とは? イングランド戦で再び「奇跡」を起こすカギは? (2ページ目)

  • 斉藤健仁●取材・文 text by Saito Kenji
  • photo by AFLO

【チリを格下と思って戦ってはいけない】

「ロス・コンドレス」でプレーする選手の大半は、スーパーラグビー・アメリカーズに参戦するチリ唯一のプロクラブ「セルクナム」に所属している。ただ、ほとんどの選手がほかの仕事で生計を立てるアマチュア選手であり、代表活動で報酬が支払われるようになったのも昨年からと、決して恵まれた環境とは言えない。

 南米サッカーの強豪国であるチリはラグビーに集中する環境が少ないため、首都サンティアゴにあるイングリッシュスクールでラグビーを始めた選手も多いという。ワールドカップに出場する最終33人のスコッドのなかに4組も兄弟が選ばれているのも特徴のひとつだろう。

 イングランドのクラブでプレーするキャプテンのFL/No.8マルティン・シグレンと、FL/No.8アルフォンソ&HOディエゴのエスコバル兄弟らを中心に、チリのFW陣はフィジカルが強い。決して手を抜かない愚直なチームスタイルで、セットプレーでも手を抜かずに奮闘する。

※ポジションの略称=HO(フッカー)、PR(プロップ)、LO(ロック)、FL(フランカー)、No.8(ナンバーエイト)、SH(スクラムハーフ)、SO(スタンドオフ)、CTB(センター)、WTB(ウイング)、FB(フルバック)

 BK陣には、昨年のワールドラグビー・ベストトライ賞を獲得したSOロドリゴ・フェルナンデスと、アメリカ大陸予選で決勝のPG(ペナルティゴール)を決めた万能BKサンティアゴ・ビデラが中軸として存在する。

 夏のテストマッチではナミビア代表に26-28と惜敗したものの、日に日に実力をつけているのは事実だ。トップチーム同士で対戦するのは初だが、アンダー世代では若きFL姫野和樹やSO松田力也のいたU20日本代表が2013年に対戦し、35-38と苦杯を舐めた経験もある。

 また、2017年には福井翔大や長田智希もチリと対戦しており、その時は28-22で勝ったものの内容は接戦だった。前回ワールドカップの開幕戦で日本は、ロシア相手に後半途中までクロスゲームとなっただけに、決してチリを格下と思って戦わないだろう。

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