ラグビーの名門・東福岡が復活の花園V。「自分では優勝できない」の葛藤を乗り越え、名将が決断した一大変革 (2ページ目)

  • 斉藤健仁●取材・文・撮影 text & photo by Saito Kenji

【報徳学園との決勝は今季3度目】

 東福岡は地元ラグビースクール出身のタレントが数多く在籍し、自陣からでもスペースがあればボールを大きく左右に動かす「展開ラグビー」が強みのチームだった。その高いスキルを武器に、2009年度から「花園3連覇」という偉業を成し遂げた。

 しかし、ベスト4の壁を破れない状況を打開すべく、名将・谷崎重幸監督(現・新潟食料農業大ラグビー部監督)のあとを継いで就任11年目となった藤田監督は、大きな変革を実行する。

「花園は一発勝負のトーナメント。点を取っても、取られては勝てない」

 これまで東福岡はボールをワイドに動かす特徴を活かすべく、練習の7~8割をアタック練習に割いていた。だが、一転して練習の7~8割をディフェンスに変更したのである。

 ディフェンス強化に伴い、キッキングゲームの精度を上げることも努め、アタックではターンオーバーからの攻撃に主眼を置いた。今季の3年生は入学当時から「体を当てるのが好きな選手が多かった」(藤田監督)と、その代のカラーを見極めての判断でもあった。

 しかし、春の選抜大会では決勝まで駒を進めたものの、対戦チームにコロナ陽性者が出たため辞退勧告を受けて、不戦敗で報徳学園に優勝を譲る形となった。また、夏のセブンズではランナーの揃う報徳学園に決勝で敗れた。日本一のタイトルにはあと一歩と、悔しい時期が続いた。

 優勝を手にできたのは10月。東福岡主体で臨んだ国体では18-17で大阪を下し、ようやくひとつ実を結んだ。「大きな自信になった」と藤田監督が振り返ったように、自分たちの新しいスタイルに確信を持つには十分な経験だった。

 そして1年間の集大成となる全国高校ラグビー大会。東福岡は県予選からディフェンスで反則をしないように注視し、0.1秒でも早く起き上がってスピードを上げる基本動作を徹底した。

 Aシードに選ばれた東福岡は2回戦、3回戦を難なく突破し、準々決勝では佐賀工業(佐賀)に24-18と逆転勝ち。これで勢いに乗ったチームは、準決勝の京都成章(京都)戦を45-17で快勝して"鬼門"を無事に突破。因縁の相手である報徳学園との決勝戦に駒を進めた。春(選抜)、夏(セブンズ)、冬(花園)と、3度の決勝が同カードになるのは史上初めてのことだった。

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