2022.01.10

花園Vの東海大大阪仰星。日本一になるために変わったきっかけは「監督を疑え」の教えと数学教師からの「正解でなくてもいいのでは?」

  • 斉藤健仁●取材・文・撮影 text & photo by Saito Kenji

【湯浅監督がハッとした言葉】

 仰星の生徒たちは2日間で、國栃を分析した。そして、決勝ではSO(スタンドオフ)吉本大悟(3年)のロングキックを使い、相手陣で戦う時間を増やすことを自分たちで決めたという。

 前半5分、その作戦どおりキックで敵陣に入った仰星FW陣はモールを10メートルほど押し込み、相手の守備を右サイドに集めたあとに素早く左に展開。最後はキャプテン薄田が左隅にトライして先制する。

 さらに12分、再びキックで敵陣深くに侵入すると、はやいテンポで攻撃を繰り返し、最後はCTB(センター)野中健吾(3年)のショートパスにCTB中俊一朗(3年)が縦に抜けて12−0。連続トライで試合の主導権を握った。

 その後、前半22分にトライを許したが、その後は國栃が武器とするモールを止め、接点でも相手のボールを奪い返す激しいディフェンスでゴールラインを割らせることはなかった。一方、仰星伝統の「ノーラックラグビー」も冴えわたり、最終的に5トライを挙げてノーサイドを迎えた。

 2010年代、仰星は高校ラグビーを引っ張ってきた。しかし、早稲田大で活躍するCTB長田智希(4年)やFB(フルバック)河瀬諒介(4年)が高校3年時に5度目の優勝を果たしたあとは無冠。3季前は花園にも出場できず、一昨季、昨季はベスト8と、苦しんでいた印象は否めなかった。

 昨年2月に新人戦が行なわれた頃、湯浅監督は生徒に「今のプレー、何でしたの?」と問うと、生徒たちが口ごもっていることがあった。それを見ていた同僚の数学の先生に、こう諭されたという。

「生徒は湯浅先生に『正しいことを言わないといけない』と思っている。正しいことでなくても、正解でなくてもいいのでは?」

 そう言われた時、湯浅監督はハッとした。

「過信というか、仰星はこうあるべき、と押しつけていた。監督として経験したことで傲慢になっていた部分があったのでは」

 高校時代は仰星のキャプテンとして初優勝を成し遂げ、コーチになっても優勝、さらに監督でも3度の優勝を経験してきた湯浅監督は、これまでを振り返って自省した。