早大が天理大の想定外の強さに脱帽「関東では味わえないエナジーを感じた」

  • 松瀬 学●文 text by Matsuse Manabu
  • 齋藤龍太郎●写真 photo by Saito Ryutaro

 完敗だった。パワー、技術、スピード、そしてエナジー。昨季の王者・早大はすべてにおいて天理大に圧倒され、決勝最多失点の28-55で敗れた。連覇は成らなかった。

優勝を喜ぶ天理大の選手たちと負けて肩を落とす早大の選手たち優勝を喜ぶ天理大の選手たちと負けて肩を落とす早大の選手たち

 11日のラグビー全国大学選手権決勝。新型コロナ禍による観客制限で、約1万1千人(前売りチケット販売分)が詰めかけた国立競技場。試合が終了すると、アカクロジャージーの早大フィフティーンの多くが緑の芝に崩れ落ちた。エースFB(フルバック)の河瀬諒介は芝に頭を突っ伏して、しばらく立ち上がることができなかった。

 河瀬は号泣した。最後、自身が持ち込んだボールを相手に奪われ、そのまま蹴り出されたからだった。「頭が真っ白になって」と、3年生FBは漏らした。

「悔しいという言葉でおさめていいかというぐらいですが、悔しいとしか出てこない。僕がキャリーして...。よく覚えていないんですけど...。終わりました。"やってしまったな"と」

 天理大の強さはある程度、分析済みだった。ゲームテーマが「仕掛け」と「仕留め」。早大としては、まずはゲームの生命線、接点、ブレイクダウン(タックル後のボール争奪戦)で仕掛け続けるつもりだった。

 だが...。今季のチームスローガン『BATTLE』を実践できなかった。天理大と一番感じた差を聞けば、河瀬はこう、途切れがちに言葉を続けた。

「やっぱり、決勝に向けた思いというか...。僕たちも勝ちたいという思いが強くて、バトルしましたけれど...。それ以上に、向こうにバトルされました」

 キックオフ直後、巨漢PR(プロップ)の小林賢太がボールを持ち込んだ。黒いジャージーが束になってかかってきた。タックルを受ける。2人目のFW(フォワード)にボールを奪われた。想定外の強さで、と小林が嘆く。

「正直、あそこまで、ボールにプレッシャーをかけてくるという印象はなかった。すさまじい圧力をかけられて...。ふがいなくて」

 その後、自陣に攻め込まれ、早大がボールを持ち込んだラックを、トンガからの留学生、LO(ロック)のアシペリ・モアラにボールを奪取され、CTB(センター)市川敬太に先制トライを奪われた。その数分後には、ラックサイドを力で破られ、モアラにトライを重ねられた。

 開始10分で2トライを奪われた。スコアよりも、その圧力のすごさに早大はリズムを失った。昨年の準決勝(早大52-14天理大)とは真逆の展開だった。天理大の個々の強さはともかく、束になっての破壊力。何といっても、ブレイクダウンの"セカンドマンレース"(2人目勝負)で後手に回った。

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